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ゴキブリと俺 NEO - 2003/04/22 [Tue]

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俺はゴキブリが嫌いである。


夏の深夜に台所に行くのが正直怖い。でもヤツらを見つけてしまった場合は迷わず戦いを挑むようにしている。怖いのは確かだがそれ以上に負けるのはキライなのだ。俺がヤツラに戦いを挑むときの武器はスリッパである。武器として用いるものとして中途半端な殺傷力の殺虫剤だけはいけない。最近ではかなり強力なモノもあるようだが、昔ながらの殺虫剤を気楽に使うとかえってキケンである。ヤツラったら中途半端に攻撃すると飛ぶから。それだけはまずい。飛ばれるとなす術がない。


そしてヤツらが現れるのは台所とは限らない。何処かから飛んできて思わぬところに居たりするのもヤツらの恐ろしいところである。以前洗濯物を取り込んでいるときにティーシャツの中にヤツがいたことがある。そんな風にヤツラは予想もしないところにいることがあるので油断は禁物である。今回は俺が思わぬところでヤツラに遭遇した時の壮絶な戦いのエピソードをお送りしよう。


俺は夏のある日、脱糞をしていた。その時はとても出が悪く、なんとかひねり出したモノも切れが悪かった。だから俺は便所の中で汗だくだった。真夏の脱糞というのはなかなか難儀である。そしてなんとかすべてをひねり出し、ほっと一息。そして俺はトイレットペーパーに手を伸ばした。トイレットペーパーを引っ張り出したその時、ヤツは現れた。まるで誰かが仕組んだ罠かのように。何とトイレットペーパーとその上のカバーの間から現れたのである。ゴキブリ登場のテーマが俺の頭の中で流れたような気がした。


そこからヤツは先制攻撃に出た。黒光りする自慢の翅でイキナリ飛びやがったのだ。まだこっちが何もしてないというのにいきなり飛びやがるとはなんと卑怯な。しかもトイレという密室で、である。俺のケツにはまだ大便が付いている為に個室の外に逃げ出すわけには行かなかった。だから俺は個室の中で大暴れをした。とにかく体にとまられてはたまらない。自分の体にヤツが張り付くのだけは避けたかったのでとにかく俺は暴れたのである。


それはまさに地獄絵図だった。


大便をケツに付けた男が汗だくで狭い個室で暴れている。悲鳴を上げながら。最悪の絵である。とにかく体にヤツが張りつかないように暴れ続けているとヤツは壁にとまった。ただでさえ汗だくだったのに大暴れしたことで俺はさらに汗だくになった。しかし、ヤツが壁にとまったことで一挙に形勢は逆転した。チャンスだ。血祭りに上げるチャンスだ。その時の俺は殺意の塊だった。


自分が履いていたトイレ用のスリッパを手に持ち狙いをを定めた。しかし、運が悪い事にヤツは壁と壁つなぎ目のところにとまっていた。つまり、四角形の個室の辺の部分だ。そこは非常に攻撃が当てづらい場所である。スリッパが当たるかどうかそれは俺の力量にかかっていた。俺はスリッパの裏ではなくサイドで叩くことにした。それはかなり難易度が高い。『面』ではなく『線』でヤツを攻撃するということは一センチでもズレれば失敗してしまうのである。しかし、今殺らなければ殺られるのはこの俺だ。そして渾身の力をこめ、俺はスリッパを振り下ろした。


さすが俺。プレッシャーに弱い。


俺は見事に狙いを外した。するとヤツはまた飛びやがった。俺はさらに汗だくになりながら暴れた。そしてヤツはなんと扉の下にわずかに開いている隙間から廊下へ逃亡しようとしてやがる。に、逃げるのか! きさま! 勝負は着いていないじゃないか! 俺はヤツを追おうとしたがケツをまだ拭いていないことを思い出た。そして急いでケツを拭きズボンを履かず下半身丸出しで扉の外へ飛び出す俺。しかしヤツはもうそこには居なかった。俺の負けだ。完敗だ。全身汗だくで下半身丸は丸出し、そして片手にはスリッパという最悪の絵を描き出した俺は、ひとり廊下で自分の無能さを悔やんだ。


俺はゴキブリが嫌いである。



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