トップイメージ
天国のさとみさんへ NEO - 2003/04/22 [Tue]

table     table



これは俺が旧サイト『マダファカ!!』を運営している時の出来事です。


2002年5月22日の夜、一人の女性が天国へと旅立ってゆきました。23年と半年の短い生涯を終えて。彼女は急性骨髄性白血病とたたかっていました。俺は彼女の顔は知りません。モニター越しのコミュニケーションだけでした。彼女の日々の病とのたたかいのことは彼女の日記でしか知りません。でも俺と彼女の間には確かに交流がありました。そう。短かったけど確かに彼女とは楽しい交流があったんです。


最初の出会いは彼女からのメール。彼女は自身のサイトから俺のサイトへのリンク貼ってわざわざリンク報告をしてくれたのです。2001年12月14日の事です。その日は俺の誕生日だったりする(それは単なる偶然ですけどね)。そして俺もリンクを貼り返しました。それが最初の出会いでした。そのあと、メールのやり取りもしました。掲示板では明るく書き込みもしてくれてました。


当時、彼女が書き込みをしてくれていた掲示板は、思いつきではじめたモーニング娘関係のことを取り扱うコンテンツ専用の掲示板でした。後に『マダファカ!!』をリニューアルした時にそのコンテンツが無くなった為にその掲示板も当然無くなるはずでした。だけど、彼女がいつも書き込みをしてくれていたのはその掲示板の方だったのでそのまま無くさずに残しました。彼女がいなかったらその掲示板はもっと早く無くなっていたと思います。


彼女はメインの掲示板は少し自分には敷居が高いなんて言ってた。だけど彼女が書き込みをしてくれていた方の掲示板の方は見てる人も少なくて、書き込みしている人達も慣れ合いが出来るような人達ばかりだったのでとても書き込みしやすくて楽しいと言ってくれてました。実際その掲示板での書き込みはみんな良い意味でバカっぽくて本当に和んだ雰囲気だったから俺自身もとても楽しかったんですよね。


それで、モーニング娘専門のコンテンツが無くなった後も内容はそのままでしばらく運営していました。その掲示板は背景が白だったんですが、あるときフト彼女は白血病の影響で目が見え難くなっているというのを思い出したんです。なので俺は、見易いように掲示板の文字の大きさをひとまわり大きくし背景を黒に変えました。そのことは何気なく思いついてやっただけなので、特に彼女に直接は言わなかったんですけどね。そんな中、彼女が亡くなる5日前にメールがきました。それが彼女から貰う最後のメールになるなんてそのときは思わなかったけど・・・。


それは掲示板を目に優しい形に変えたことへのお礼のメールでした。確かに彼女がいたから文字の大きさや背景の色を変えたのは確かなんだけど・・・・、そのことは彼女には伝えて無かったし、本当に何気なくやっただけだったんでメールが来て本当に驚きました。それは凄く長いメールでした。本当に気持ちのこもったメール。そのメールからは前向きに進みたいと思う自分と、死と苦痛への恐怖や不安を感じて潰されそうな自分とが常にぶつかり合っている彼女の気持ちがなんとなく垣間見えるような気がしました。だけど常に明るいんですよ。彼女のメールはいつも明るかった。まるで自分を奮い立たせようとするかのように。


そのメールで彼女は俺が彼女のために掲示板を見易くした事を指して、『無言の励まし』だと言ってた。それが凄く嬉しかったと言ってた。自分が本当になんと無しにやった事でここまで喜んでもらえた事実には驚くと同時に本当に嬉しく思いました。少しでも彼女の元気に繋がれば良いなと思いました。


そして18日、彼女が亡くなる4日前にはその掲示板に、いつものように顔文字を駆使したこの上なく明るい書き込みをしてくれました。そのメール同様それが彼女のここへの最後の書き込みになってしまいましたけど・・・。その18日以降、彼女のサイトの日記の更新が止まったので22日の昼間にいつもは覗かない彼女のサイトの掲示板を覗いてみたんです。彼女のサイトに限らず、俺は他サイトの掲示板を基本的に見ないんです。でも日記の更新が止まったのを見てなんとなくイヤな予感がしたんですね。


するとその嫌な予感は的中してしまいました。そこには主治医の先生の手によって、現在彼女は『正念場』であるとの事が書き込まれていたんです。本当に驚いた。それから俺はずっとその掲示板を見守っていました。彼女とのやり取りは何度もしていたけど、その掲示板には一度も書き込みをした事がなかったんですよね。だからなんとなく書き込みを躊躇してしまって、ただただ見てました。掲示板を開きっぱなしにして一定間隔でリロードして。


だけどやっぱり黙ってられなくなって22日の深夜(正確には23日)に思い切って書き込みをしたんだけど・・・・・・・その直後に主治医の先生の書き込みがあって、彼女は22日の20時17分に既に亡くなっていたのがわかりました。本当に言葉を失いました。マウスを握ったまましばらく放心状態でした。すぐに涙は出ませんした。あまりにも唖然としてしまって。だけど、23日の朝方に彼女から貰ったメールや彼女が書いてくれた俺のサイトの掲示板への書き込みを読み返していたら涙が出ました。


彼女は最後まで生きる意思に溢れていました。最後まで明るかった。俺がもらった彼女からのメールと掲示板への書き込みにはそんな彼女の生きる意思が刻まれてた。それを言葉として明確に表現していなくても彼女の明るさがそれを象徴していたんだと思います。それを読んでたら涙が出たんですよね。


白血病? なんだよそれ。こんな理不尽な事があるのかよ。そんな風になんとも言い難い感情が込み上げてきました。彼女は最後のメールで、『書きたいことたくさんあるんですが また書きます。』と言っていました。そのメールは、『また書きます。 おやすみなさい。』と締めくくられていました。


だから俺はまた彼女とのメールのやりとりが出来るのを楽しみにしていました。だけど彼女は逝ってしまいました。彼女からはもうメールを受け取ることはありません。掲示板への新しい書き込みも見ることは出来ません。でも彼女は最後まで頑張った。最後まで生きる意思を忘れなかった。その意思はあなたが天国に行った今でもずっと残ります。


病院で治療に携わった先生や看護婦さんはもちろん、あなたに出会った全ての人々は、あなたのことを絶対に忘れないでしょう。あなたから貰ったメールには生きることへの情熱が溢れていました。あなたから貰ったリンクのコメントは本当に嬉しかったんですよ。あなたが書いてくれる掲示板の楽しい書き込みは凄く楽しみだったんですよ。あなたには直接会う事が出来なかったけど。お互い顔は知らないけど。確かにそこには生きた言葉のやり取りがありました。


あなたから貰ったメール。リンクのコメント。掲示板でのやり取り。全部俺の宝物です。あなたは一生懸命生きました。多くの人が勇気をもらったと思います。それぞれが何かを得たと思います。本当に本当にお疲れ様でした。天国でゆっくり休んでください。短い間だったけど俺と友達になってくれてありがとう。いや、これからも友達ですよね。本当に本当にありがとう。安らかに眠って下さい。俺みたいなヤツと言葉を交わしてくれて本当にありがとうございました。


さとみさん。あなたのことは一生忘れません。


-------------------------------------


以上の文章は当時書いたものに修正を入れて掲載したものです。


でね。彼女が亡くなってからもこの件に関するメールが俺のところに来ることが何回かありました。中にはお墓参りがしたいから彼女の住所や関係者の連絡先を教えてくれないか、なんてのもあった。そんなの知っていたとしたって教えるわけが無いじゃないですか。彼女が亡くなった直後、無節操に彼女のサイトを宣伝してまわった人たちがいました。それが騒ぎを大きくし、彼女のサイトの掲示板は一方的な感想の書き込みに溢れ、それに加えて荒らしを行う人も紛れ込んできました。そして掲示板は目も当てられない状態になり、予定していたよりもずっと早く彼女のサイトは閉鎖されてしまいました。


確かに彼女の死は色々なモノを遺してくれたとは思うけど、だからといって何も考えずに彼女のサイトを宣伝して回ったりすればどうなるかということくらい考えて欲しかったです。悲しいですけど、人間の死ってのはただそれだけで話題になりやすいものなんですよ。野次馬がどんどん集まってくる。結果として彼女は見世物のような感じで話題だけが一人歩きして収拾のつかない事態にまで発展してしまったんです。


直接彼女と関わった人が自サイトでこの件に書くならともかく(友人として彼女に捧げる言葉を形にしたくなるのは自然なことだと思うしさ)、後からこの出来事を知った人が彼女の死から何かを感じたからといって無節操に紹介して回ったり、一方的な感想を気楽に掲示板に書いたりしたらそりゃ収拾のつかないことになる。正直閉鎖直前の彼女のサイトの掲示板の感想の書き込みには『気楽に書いた』感じのするものがかなり多かったですよ。本当に見てられなかった。


もっと言えば、紹介するならするでもいいんだけど、やっぱタイミングとかその後のこととかは絶対考慮に入れて行動すべきだよ。だから気楽に彼女のことを触れ回るような真似はしたくありません。だから連絡先を知っていたとしても何処の誰かわからない人に教えるなんて出来るわけもない。正直なところ、今回こうして再アップするのもかなり悩んだんですよね。コレ自体が彼女の死を触れ回ることに繋がらないだろうか、自分の心にしまっておいたほうが良いのではないか、ってね。でもやはり自分の友人のひとりに起こった出来事として形に残しておきたくてあえて再アップすることを決意しました。そう。大切な友人の一人のことだから。


あと、彼女は強い人だったんですね、というメールもあったけどさ。確かに死が目前に迫っている恐怖を必至でねじ伏せて明るく振舞う彼女には強さがあったと思うけどね。ただそれだけじゃないんだよね。最後までアップされることはなかったけど、死を直接的に連想させるようなかなりダークな文章も彼女は沢山書いていたと主治医の先生がおっしゃってました。怖くないわけないじゃないですか。彼女からもらったメールは確かに明るい文体で書いてあったけどそこには恐怖感もかなり出てた。彼女をただ単純に一言『強い』とだけ言ってしまうのはちょっと違うと俺は思います。想像も出来ないくらい色々なモノを抱えてたんだろうなと思うよ。


俺は文章として明確に読み取ることが出来た『彼女の強さ』以外のモノも読み取る努力をし、それを大事にしたいと思っています。もちろん彼女のサイトをリアルタイムで見てた人は今となっては少ないわけで、俺のこの文章を通してしか彼女の話を知らない人も多くいるのは理解しています。その要素だけで第三者に対して『彼女の強さ以外のモノも感じ取れよ』、と言うのが無茶なのもわかってます。そもそもここを見ている人に説教垂れる気なんて無いよ俺だって。


じゃあ何故、彼女はただひたすら強かっただけじゃない、なんてことをここで補足的に書いて強調してるかというとね。俺が彼女の話をあえて再アップした意図は、ただ単純に『彼女の強さを多くの人に知って欲しい』からじゃないというのを理解してもらうためです。ただひたすら強い人だった、という風にある種のヒロインのような、偶像のような見方をされるのはちょっと心苦しいんです。彼女は確かに実在していた生身の人間だったのですから。その生身の彼女を大事にしたいんですよ俺は。ひとりの友人として。



table     table

戻りイメージ