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理想


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何をするにも。


何を話すにも。


俺が何かしら行動するときには、常にその事象に対して自分が望む『理想形』というものが俺の中に生まれてくる。俺には、迷った時や困惑している時に『俺には理想主義なところがあるから』というセリフを吐く癖がある。


そこで考えた。


そんなとき俺が言う『理想』ってのは何か。


じっくり考えた。


そして俺の心の奥底に向かって呼びかけた。俺の本当の心に呼びかけた。すると小さな声でこんな答えが返ってきた。


理想? 理想だって? お前が迷ったときや困惑したときに吐く『理想』という言葉は理想じゃない。ただの『言い訳』だ。



言い訳?



言い訳。言い訳。言い訳。



・・・・そう。俺が理想という綺麗な言葉で表現していたのは、実はただの『言い訳』だったのかもしれない。『出来なかった訳じゃない、理想にしたがってあえてしなかったんだ』 と主張して、自分の臆病さを美化していただけなのかもしれない。そう思ったとき、今までに無い程の自己嫌悪に陥った。


『理想に向かってひた走る。』


それは良い。それは俺の本当の心も望んでいる事だ。だけれど、俺がいつも気楽に吐いていた『理想』という言葉はそれとは違う。俺の本当の心が望まない嘘の理想。後から付け足した偽の理想。逃げ出した自分を慰めるための言い訳だ。


いつの間にかそんなものが俺の本当の心の周りに根付いてしまったみたいだ。いつの間にか本当の心を覆い隠してしまっていたんだ。俺は今ごろになってそれに気が付いた。そのとたんに俺は、その根を一度焼き払って本当の心と向かい合わなくては、と焦り始めた。


邪魔だ。そんな嘘の理想なんか邪魔なだけだ。それを早く除けなければ俺は先へは進めない。だけど俺にそんな勇気があるのか。この嘘の理想にすがっていればいつまでも居心地だけは良い。だけど邪魔なんだ。俺が先に進むためにはそれは邪魔なんだよ。


除けてくれ。


この鬱陶しいものを除けてくれ。



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