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1998年12月26日(土)、俺は秋葉原を徘徊していました。『良いクソゲーはないか?』、『素敵なクソゲーはないか?』などと呟きながら。その頃はまだまだクソゲーのサイトを始めたばかりでクソゲーに楽しさを見出せる体質だったのです(良いクソゲーってなんだこの場合)。わざわざ意図的に金を出してクソゲーを買っていたあの若きある日、俺は出会いました。
このファイティングアイズに。
しかし、このゲームに出会ったのは、秋葉原を徘徊していて偶然見つけた・・・って訳でもないんです。実はソフトバンク社のザ・プレイステーションと言う雑誌で、すでにこのゲームの記事を目にしていたのです。その記事とは、ザ・プレイステーション誌の「PSソフト 品評会」なるコーナー。まあ、要するにレビューの記事です。そのレビューからコメントを抜粋。
『僕がこれまでに遊んできたゲームの中で、最低最悪のソフト。』
『僕がユーザーの立場なら580円でも買いません。』
俺は6279円で買いましたが何か?
雑誌の編集者にここまで言われるゲームはあのデスクリムゾン位のモノだと思っていた俺はかなり衝撃を受けました。3名の編集者の各点数は100点満点評価で11点、10点、19点。学校の試験ならブッチギリで赤点。留年確定です。秋葉原を徘徊している時、はじめはすっかりこのゲームのことを忘れていたのですが、突然ふと思い出してしまいました。
そのまま思い出さなきゃ良かったのに。
しかし思い出してしまったのだから仕方が無い。早速新作コーナーに赴きました。そして気がつくと6300円を店員に渡し、つり銭21円を受け取っている俺がいました。
どうして誰も俺を止め無かったんですか。
止めろって。6000円もあれば白木屋でかなり呑めるのに。
ではそろそろゲーム内容を紹介しましょう。このゲームをやると殺意が芽生えます。間違い無く。このゲームに関しては何のためらいも無くクソゲーの称号をあたえても良いでしょう。ファイティングアイズは98年に発売された3D対戦格闘ゲームですが、そのダンボールっぽい厚みの無いチープなキャラを見ただけである程度嫌な予感がするのは俺だけではないはずです。さすがに造形はあのフィストよりはマシですが、悪い意味での存在感はフィストの方が上です。こちらのファイティングアイズは『普通にショボイ』といった印象。
俺はもっと豪快にダメな感じを期待していたので、この地味なダメ具合に少しガッカリしましたが、ゲームを立ち上げてからキャラの造形よりも気にかかるモノを発見しました。
画面の右端が何故か少しバグリ気味なんです。
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画面の右端をアップにしてみました。右端になにやら数ミリ、帯のようなモノが確認できると思います。これは画面を取り込む際に失敗したわけではありません。これがデフォルトです。
でも、当初俺は家のテレビがこのゲームのスクリーンサイズと合っていないためにブラウン管の端の方が上手く映らないだけかと思っていたのですが、説明書のゲーム画面を見てこのバグは開発時からあったものであるのを確信しました。
だってこの画像、説明書のからスキャンした画像だもん。なのに家のテレビと同じバグり方してるもん。 |
そのバグを泣きながらしばらく見ているとデモが終了しいつの間にかタイトル画面が出てきました。それではスタートボタンを押してキャラクター選択画面に行ってみましょう。何処かで見たことがあるようなキャラばかりが並んでいますがきっと気のせいです。左からテリー、ダック、タン先生、ボブ・・・・・・・いえ違います。気のせいです。これはファイティングアイズです。餓狼なんとかとは一切関係ありません。
   
パクり気味な個性的なキャラクター陣の中に一人、イカレ・・・いや、本当の意味で独創性あふれるキャラが存在しています。俺はすぐに彼をマイキャラにすることを決意しました。
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その名はシムイ。
ズダ袋被ってます。
コイツ、
確実に頭おかしい。 |
顔を隠すにしても他に方法が無かったのでしょうか。
ちゃんと用意して来いよ。
ズダ袋君と命名。キャラを選ぶといよいよコンピューターとの対戦が始まります。まだ技表を見ていませんが、俺はバーチャファイター1、2をかなりやった経験があるので、まあバーチャのキャラと同じようなコマンドを入れればなにかしら技が出ると思うのできっと大丈夫でしょう。
・・・・・・考えが甘かったようです。
全然動かねぇ。
なんですかこれは。でもよく見るとこじんまりしたパンチとキックが一応出ています。
相手にとどかないけど。
仕方が無いので技表を見ることにしましょう。説明書を開きます。
ひとつも載ってねえ。
お手上げです。その後もしばらく頑張って操作してみましたがバーチャファイターで見ることが出来たようなリアリティー溢れる華麗な技は全く目にすることが出来ませんでした。この爽快感のなさはただ事じゃない。俺はこれに6279円を出したのか。ようやくここで我に返り途方に暮れました。何ともいえない怒りがこみ上げてきました。俺はパッケージを叩き割ってやろうという衝動に駆られ、それを手に取った瞬間パッケージ裏にこんな言葉が!

『このゲームに並ぶ格闘ゲームは無い!』
え? な、なんだって?
このゲームに並ぶ格闘ゲームは無い!
ええ?
このゲームに並ぶ格闘ゲームは無い!
いや、まあ、確かに無いけどさ。
悪い意味で。
この神経を逆なでするようなコメントは一体!? 唖然としながらさらによく見ると。
『拝啓フルポリゴン様(涙)』
俺が泣きたい(涙) |
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拝啓背景をポリゴンで無理して描いたからこんなダンボールで作ったみたいなキャラになったんだろーがよ。なめてるのか。おまえは消費者をなめてるのか。そしてさらにさらによく見ると。
『戦・意・喪・失!』
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主に俺がな。 |
そしてとどめに。
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『笑止!』 ? |
それは俺のセリフだ。
なんだろう。この狙い済ましたように神経を逆なでするコメントの数々は(そのカラクリはこちらを)。
限界まで気分を害したところで、とりあえずもう一度プレイしてみることにします。せっかく買ったんだしね。ここである事に気がつきました。練習モードで技表を確認できるのです。だからといって一つも説明書に技コマンドを載せないってのはどうなんでしょうか。一応それを見ながら技を出してみることにします。それぞれの技に殆ど違いがありません。ゲームシステムも一応色々考えてるつもりのようですが全て意味をなさないので説明はここでは省略します。
とりあえず、これは間違いなく本物です。
こんなものを意図的に買ってしまった自分を呪いながらしばらく唖然とし、
それからふと画面に目をやると。
相変わらず画面の右端がバグっています。 |
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