THE ALMIGHTY


ABOUT BAND
イギリスの刺青が似合う骨太でパンキッシュなロックバンド。

バンドスタート時はMOTORHEAD的なパンキッシュなタテノリロックに男の哀愁を感じさせるメロディーが乗る音だったが作品を重ねるごとに色々と志向を変えてきたバンドである。メタリカのブラックアルバムの成功から訪れたヘヴィーネス志向を素直に取り入れたり、シーンでメロコアが盛り上がるとそれを取り入れたりと割とフラフラとしている。しかし一応根底にある『らしさ』ってのは常に保っている。

ダミ声ヴォーカリストのリッキーが歌うメロディーは男臭いだけでなく哀愁が漂うこともあり、それがこのバンドの持ち味だ。ヘヴィーであること、アグレッシヴであると同時良いメロディーを忘れないというのがこのバンドの良いところである。アコースティック色が強い曲でもダレることなく名曲と言えるような良いメロディーが聴けるのは強みだ。あと、掛け声コーラスも大きなポイント。力強い掛け声コーラスのカッコよさは特筆モノだ。

『Just Add Life』をリリースした後に一度解散し、その後復活を果たしたが、正直、復活後の彼らはかなりパワーダウンしてしまっている。だがこれからまた本当の意味での復活を果たしてくれることを願いながらこれからも見守っていきたいバンドである。
[2004/01/08]


DETAILS >>


BAND BIO
ベルフィストで生まれ、スコットランドのグラスコーで育ったリッキー・ウォーウィック(Vo.G.)は、スティッフ・リトル・フィンガーズのアルバムを聴いてギターを手にした。彼は約一年ほどニュー・モデル・アーミーのツアーでサポートギタリストとして参加していたこともあり、その間すでに自分のバンド結成の腹案を温めていたらしいが、バンドを離れた後一時期音楽活動から遠ざかっていた。

88年になってからグラスコーでメンバーを集め始め、スタンピー・モンロー(Dr)、フロイド・ロンドン(B)、タントラム(G)、とThe Almightyを結成、地道な地元での活動や国内のクラブ・ツアーなどを一切省いて、直ちにロンドンに出てギグを行いレコード会社との契約をいきなり狙うという大胆な勝負をかけた。そして急作りのデモテープとそのギグが決めてとなり、複数のレコード会社からのオファーの中からポリドールとの契約を手に入れた。

その後はGun、Crazy headなどのサポートをつとめて、コトあるごとにステージ経験とそれに対する音楽誌の高い評価を評価を積み重ね、89年夏にはホース(ロンドン)とのカップリングツアーも実現した。そして同年9月にはデビューアルバム『Blood Fire & Love』をリリースした。

その後はモンスターズ・オブ・ロックに参加するなどの活躍を見せたがメンバーチャンジを行いながらバンド活動が失速。Just Add Life発表後に残念ながら解散してしまう。バンド解散後にリッキーはThe Almightyよりもずっとストレートなパンクを演奏する(Sic)を結成し97年にアルバムを発表。しかしバンドはそれ一作で消滅。しばらくの時が流れる。98年になるとリッキーの頭の中にはThe Almighty再結成の案が出てきたようだ。そして、同年の末に音楽誌には再結成を伝える記事が小さく載ったのである。

リッキー・ウォーウィック(Vo.G)、スタンピー・モンロー(Dr)、フロイド・ロンドン(B)の3名が再結成当初のメンバーだったが、それに元Whateverのピート・フリージン(G)が加入してひとまずのメンツが固まる。このメンツでスタジオに入り10曲を完成させレコーディングに入る。しかしこの時期に突然フロイド・ロンドンが脱退を表明。その後任としてHorse Londonのデーモン・ウィリアムスが加入した。

再結成アルバムの『The Almighty』にはフロイド・ロンドンを除いた3人のメンバー写真が使われているが、クレジットを見るとベースにはフロイド・ロンドンの名が挙げられている。脱退したはずのフロイド・ロンドンがレコーディングでベースを弾いているようだが、その辺かなり謎。もしかしたらレコーディング終了後に脱退したのかもしれない。さらに再結成第二弾アルバム『Psyco-Narco』のレコーディング前にはいつの間にかベースがギャヴィン・グレイという人物に交代している。


[2004/03/03]


ORIGINAL STUDIO ALBUMS
 ■BLOOD, FIRE & LOVE [1989]
 ■SOUL DESTRUCTION [1991]
 ■POWERTRIPPIN [1993]
 ■CRANK [1994]
 ■JUST ADD LIFE [1996]
 ■THE ALMIGHTY [2000]
 ■PSYCO-NARCO [2001]

OTHER ALBUMS >>


■BLOOD, FIRE & LOVE [1989]
ジャケット画像
01. Resurrection Mutha
02. Destroyed
03. Wild And Wonderful
04. Blood, Fire & Love
05. Gift Horse
06. You've Gone Wild
07. Lay Down The Law
08. Power
09. Full Force Lovin Machine
10. Detroit
11. New Love Sensation
メンバー画像 L to R
MEMBER NAME [XX.]
個人的評価 = 68/100
初心者オススメ度 = 40/100
デビューアルバム。基本はMotorhead的なパンキッシュロックだがアコースティックギターをフューチャーした曲などもあって勢い一辺倒ではない作風となっている。男臭さと哀愁のあるメロ。今後の彼らの持ち味となる部分がこのデビューアルバムの時点から楽しめる。だが、まだまだこれから、という感じもかなり色濃く楽曲の練りこみ具合が少々足りないのも事実。

彼らはバンド結成から本作をリリースするまでかなり駆け足で活動してきていて、地道なライブ活動というのを一切省き、いきなりメジャーからのデビューを視野に入れた活動に入っている。自分たちを売り込む為に出来る限り目立つところに出て行ってここぞというところを選んでライブをしていたのだ。そしてその作戦が見事成功して相当短い時間でデビューまでこぎつけてしまっている。

ソレゆえに楽曲が固まりきれていない。もっと時間をかけてライブを繰り返しいってその中で曲が練りこまれていけばもっと良い物になったんじゃないかなと思うとちょっと残念。これからの彼らの活躍を期待を見出せるレベルのモノではあるが裏を返せば『今後に期待』という作品とも言えるだろう。

さらに彼らのようなアグレッシヴでパンキッシュな音のバンドはライブ感というのがとても重要だと思うのだが、それがこの作品では出せてないのも勿体無い。音が全然生々しくないのである。音に奥行きが無くて彼らのアグレッシヴな部分が持つ豪快さがあまり感じ取れない。楽曲の練りこみ不足と生々しさの欠如が本作の大きな欠点。今後の姿を期待できるが、やっぱり本作だけを評価した場合はあと一歩というのが正直なところ。参考作品ということで『Soul Destruction』や『Crank』を聴いた後にでも聴いてみると良いのではないだろうか。本作は駄作ではないがもうひとつ何かほしい作品ではある。


[2004/03/03]
DISCOGRAPHY INDEX▲


■SOUL DESTRUCTION [1991]
ジャケット画像
01. Crucify
02. Free 'N' Easy
03. Joy Bang One Time
04. Love Religion
05. Bandaged Knees
06. Praying To The Red Light
07. Sin Against The Light
08. Little Lost Sometimes
09. Devil's Toy
10. What More Do You Want
11. Hell To Pay
12. Loaded
メンバー画像 L to R
MEMBER NAME [XX.]
個人的評価 = 84/100
初心者オススメ度 = 89/100
前作よりも遥かに楽曲が冴え渡る彼らのセカンドアルバム。方向性としてはパンキッシュで骨太なタテノリロケンローでMotorheadな音。確実に前作の延長線上にある作品だが演奏の迫力とか楽曲の良さは圧倒的に向上している。彼らの持ち味が本当に良い形でまとめられていると思う。骨太でありながらもそこにはキャッチーさもしっかりあって聴きやすいし、キャッチーだからといって決して安っぽくなってしまわない。パンキッシュでありながらもただギターをかき鳴らすのではなく『俺たちはリフバンドだ』とのリードヴォーカル兼ギターのリッキーの言葉の通りカッコイイリフも満載という。

そして忘れてはならないのは彼らのメロディーセンス。基本はMotorhead的なパンキッシュな骨太ロケンローだがそこに乗っているメロディーが絶妙なメロウさを持っているのが強みだ。哀愁を感じさせるメロディーも随所に聴くことが出来てリフの魅力と同時にメロディーの魅力も楽しめるのである。思い切りの良さを持ってるのにそれがただの開き直りになってない。力任せに突き抜けるだけに留まらない。それを良く表してるのが#05『Bandaged Knees』。これはかなり泣けるドラマティックな曲だ。リッキーのダミ声ヴォーカルもとても表情豊かで良い。でも根本にある骨太さってのは常に感じられる。#09なんかも同じ系統の曲である。

ただ、後半はちょっとアコースティックなテイストが強まって勢いよく始まる曲が少なめなのが残念。それらの曲も退屈というわけではなくしっかり魅力のあるメロディーが乗っているのだが、バランスとしてはもうちょっと勢いのある曲があった方がよかったのではないだろうか。正直、この作品をリアルタイムで聴いていた当時は大絶賛だったのだが、今聴くと当時のような衝撃はあんまり感じないという部分もある。それはやっぱり後半での勢いのある曲の少なさが原因。名作ではあるが緩急のバランスをもうちょっと考えてあればもっと良かった。


[2004/03/03]
DISCOGRAPHY INDEX▲


■POWERTRIPPIN [1993]
ジャケット画像
■Disc 1
01. Addiction
02. Possession
03. Over The Edge
04. Jesus Loves You... But I Don't
05. Sick And Wired
06. Powertrippin'
07. Takin Hold
08. Out Of Season
09. Lifeblood
10. Instinct
11. Meathook
12. Eye To Eye
■Disc 2 (Bonus Disc)
Live From Donington 1992
01. Crucify
02. Full Force Lovin' Machine
03. Love Religion
04. Addiction
05. Sin Against The Light
06. Free N' Easy 7. Wild And Wonderful
メンバー画像 L to R
MEMBER NAME [XX.]
個人的評価 = 75/100
初心者オススメ度 = 70/100
メタリカのブラックアルバムを意識して作られたサードアルバム。前二作は勢いよく始まる作品だったが本作はスピード感を殺して重さとグルーヴ感を重視した『Addiction』で幕を開ける。ホント、この人たちはわかりやすいというかミーハーというか。とは言うものの根本からセンスが覆されちゃったわけではないからご安心を。多少テンポをスローダウンしてちょっとヘヴィーになったThe Almightyという感じだ。そもそも彼らはそんなに器用なタイプのバンドではないから結局どうやってもパンキッシュなテイストは残ってしまう。過去の作品よりもメタリックなのは確かだが。

#02『Possession』は次作『Crank』を予感させるアグッシヴな曲で単純にリフのカッコよさを楽しめる曲。その#02のように次作を感じる曲がポツポツと顔を出す本作は一言で言ってしまえば、次作『Crank』への過渡的な作品という感じだ。悪く言えば中途半端なのだ。徹底してヘヴィーになってしまったという程ヘヴィーではないし、勢いのある曲も徹底しきれない中途半端なアグッシヴさだし。最後までテンションが上がりきらないのが残念なところだ。なんとなく迷いが見える作品である。


[2004/03/03]
DISCOGRAPHY INDEX▲


■CRANK [1994]
ジャケット画像
01. Ultraviolence
02. Wrench
03. The Unreal Thing
04. Jonestown Mind
05. Move Right In
06. Crank and Deceit
07. United State of Apathy
08. Welcome To Defiance
09. Way Beyond Belief
10. Crackdown
11. Sorry For Nothing
12. Cheat
メンバー画像 L to R
MEMBER NAME [XX.]
個人的評価 = 92/100
初心者オススメ度 = 98/100
前作の迷いを吹き飛ばす勢いでアグレッションに徹した四枚目。とにかく終始アグレッシヴに攻めてくる。初期の頃のアコースティックな哀愁漂う曲が無くなってしまったのはちょっと残念な気もしないでもないが完全に方向性をひとつに絞って作られているので聴いていて実に爽快。これはこれで正解だと思う。

#02『Wrench』は引きずるようなヘヴィーなリフが印象的で前作のヘヴィー志向をそのまま引き継いでいるが、テンションの高さが段違いだ。前作のような迷いが無いのでヘヴィーな曲は徹底してヘヴィーに、勢いのある曲は徹底してアグレッシヴにという風にバッチリ決まっている。だからこそお得意の掛け声コーラスもカッコよく決まってるのだ。

迷いが完全に吹っ切れた彼らが作るリフはとにかくカッコイイ。『自分たちはリフバンドだ』と初期の頃から言っていた彼ら。ここでそれが見事に証明された感じだ。フレーズひとつひとつが本当に活き活きしていてキレも半端じゃない。これまでの作品でもっともメタリックな音でありつつも、パンクの洗礼を受けたリッキーのパンク魂も感じる。なんだろうなこれは。本作の音はバンドとしての歯車が全てガッチリかみ合った瞬間を表現しているのかもしれない。

リリースされてからもうずいぶんと時間が経過している作品だが今聴いても充分刺激的でカッコイイ作品。難しいことなんか考えずとにかく聴いて熱くなれ!という彼らの気合が死ぬほど伝わってくる名盤である。The Almighty初心者もここから入るといいと思う。これがThe Almightyの代表作といって異論を唱えるものは殆どいないだろう。とにかく聴くべし!!


[2004/03/03]
DISCOGRAPHY INDEX▲


■JUST ADD LIFE [1996]
ジャケット画像
01. Ongoing And Total
02. Do You Understand
03. All Sussed Out
04. How Real Is Real For You
05. Dead Happy
06. Some Kind Of Anything
07. Coalition Star
08. 8 Day Depression
09. Look What Happened Tomorrow
10. 360
11. Feed The Need
12. Afraid Of Flying
13. Independent Deterrent
メンバー画像 L to R
MEMBER NAME [XX.]
個人的評価 = 83/100
初心者オススメ度 = 80/100
やたらポップな曲が多い5作目。本作は彼らのラストアルバムになってしまった。と言っても後に再結成を果たしているので一回目のラストアルバム、という感じなのだが。

本作はとにかくキャッチーさ、ポップさが前面に出まくった作品で、一番ビックリするのは#03『All Sussed Out』におけるホーンの導入。正直本作がリリースされた当時にこれを聴いたときは『コイツラも終わったな』くらいに思ったが、今改めて聴いてみるとこれが全然悪くない・・・っつうか、むしろ良い。確かにメロコアとかそういうのに影響されたのが丸見えの作風なのだが曲が良いんだからそれで良いのだ。

リッキーのヴォーカルが骨太さを演出しつつ曲はキャッチー。しかも勢いもある。ギリギリのところで図太さを保ったままに聴きやすくキャッチーに仕上げてみましたという作風なのである。何と言っても曲が良い。元々刺青が似合うような骨太ロックを売りにしてた彼らのようなバンドがポップさを極端に導入すると安っぽくなってしまうような気がするが、そういう罠にはまってないのが素晴らしい。ここで前面に出してきたキャッチーさが安っぽいどころか活き活きとした感触を作り出している。

一言で言うと『メロコアっぽいThe Almighty』と言ったところか。そう、The Almightyであることには代わりが無いのだ。メロコアになってしまったわけではなくThe Almightyとしての存在を保ったままメロコアの要素を上手に取り込んだという格好だ。前作『Crank』があまりにもハイテンションで、メタル的な作風だったからその流れを期待して聴くと確実に肩透かしを食らう作品ではある。でも、本作でも彼ららしさは失ってないし、テンションだって結構高い。#03を聴いて驚いてこれを駄作だと言ってしまうにはちょっと早すぎる。前作との比較をして評価するのではなく、ここに収められた活き活きとした曲そのものをじっくり聴いてみてほしいと思う。明るく楽しいThe Almightyも悪くない。

あと、私が持っている本作は二枚組でDisc2には日本公演のライブ音源が収録されている。彼らの作品は後に曲を加えたりしながら何度か再発売されているので現在どのような形で店頭に並んでいるかはわからない。このライブって確か後になってから単独のアルバムとして発売されたんじゃなかったかな。その辺ハッキリしないんでわかったら書き直しますね。けどこのライブ盤はおまけにしてはかなり贅沢な内容で収録曲も17曲とボリューム満点なので、二枚組のモノを中古なんかでみつけたらそれを買うのがオススメ。


[2004/03/03]
DISCOGRAPHY INDEX▲


■THE ALMIGHTY [2000]
ジャケット画像
01. Broken Machine
02. I'm In Love (With Revenge)
03. La Chispa De La Muerte
04. Big Black Automatic
05. For Fuck's Sake
06. Poison Eyes
07. White Anger Comedown
08. TNT
09. Stop
10. USAK-47
11. Alright
12. Barfly
13. Fat Chance
メンバー画像 L to R
MEMBER NAME [XX.]
個人的評価 = 78/100
初心者オススメ度 = 68/100
前作『Add Just Life』の後に残念ながら解散してしまった彼ら。しかし長い沈黙を破ってなんと再結成された。その再結成後第一弾となるのがこれである。オリジナルアルバムとしては通算6作目となる。タイトルがセルフタイトルになってることからそれなりに気合を入れて『ホンキ』で復活したんだろうなという心意気は伝わってくる。

肝心の内容は、まず結論から言ってしまうと『悪くないけど焦点がイマイチ定まってない』という感じだ。今までの作品の美味しいトコロを集めたようなモノ、と言えば聞こえはいいかもしれないが実際作品全体としてのまとまりに欠けるってのが正しい言い方だと思う。前作『Add Just Life』で見せたポップな面や初期のMotorhead的なノリ、そして『Crank』でのメタル魂を全部一度に表現しようとしてひとつの世界観にまとめきれなかったというか。

一曲一曲を単独で聴けばそれなりに聴き所はある。決定的に楽曲がつまらないってわけじゃない。カッコイイ曲も結構ある。これ一枚を通して聴くとどうしてもバラバラな感触は拭えないが、各曲で出ているカラーは間違いなく今までの彼らのモノだから、この作品を『完全に方向性を失った作品』というとちょっと言いすぎだ。バラバラと言ってもそういう意味じゃない。バラバラながらもどの曲にも彼ららしさはあるってことだ。

でも逆に言えばそれは今までの作品の焼き増し的な曲が節操無く入っているだけとも言えるわけで、その辺のことを考慮に入れればやっぱり微妙な出来なのだろう。最初の3曲は名作『Crank』収録曲のテンションをやや落としたような曲が続く。#01『Broken Machine』なんかはなかなかヘヴィーで尚且つメロディーにも魅力がある良い曲。だが4曲目に来ていきなり『Add Just Life』におけるポップさを前面に出したような曲が出てくる。そのポップさがなんとも間の抜けた感じで脱力してしまう。

#05、#06は普通に退屈な曲。#05はまだマシだが#06は微妙にポップさがあるがハッキリいって中途半端。普通にだるいのだ。この作品においてのまとまりのなさや思い切りの悪さというのが集約されてる曲と言えるんじゃないだろうか。しかし#07『White Anger Comedown』では彼らの初期作品で聴けたMotorheadのようなテイストが前に出てきて直線的なカッコよさが楽しめる。この曲のイントロのリフはなかなかカッコイイしメロディーも彼ららしくて良い。ダミ声だけどガナるだけじゃなくしっかりメロディーの良さもある。

#09『Stop』は個人的にかなり好き。全体としてまとまりの無さや思い切りの悪さがこの作品での大きな弱点であるのは確かだがメこの曲はロディーが非常に良い。もちろん『Crank』の頃のあの爆裂なテンションの高さはここにはないが、曲がよければ文句は無い。この曲は良い。彼らのメロディーセンスの良さを楽しめる曲であると言えよう。それ以降はノリの良さを重視したような勢いのある曲が結構続いて良い感じだ。その終盤戦は割りとセカンドの『Soul Destruction』の美味しいところを持ってきたという感触。やっぱり彼らの持ち味が一番活きるのってやっぱり終盤戦のようなタイプの曲なのだろう。#11『Alright』のリフなどは良い感じだし、#12『Barfly』のパンク的なノリもハマってる。

前半はちょっとヘヴィーに来たと思ったら突然間の抜けたポップな曲が顔を出し、その後は出来自体が良くない退屈な曲が続き、そして終盤に向かって骨太タテノリになって行く、というのが全体の流れになっている。やはりそれらが明確に分離してしまっているのがこのアルバムの最大の弱点である。しかも中盤が絶妙につまらないのがいけない。#04、#05、#06あたりが無ければまだずっと引き締まった印象の作品になってたと思う。中盤のダレが本当に残念。あともうちょっと厳選した曲を収録していれば良かったのに。

平たく言うとこの彼らの復活作は『なかなか』ってところだ。中盤を除けば。


[2004/03/03]
DISCOGRAPHY INDEX▲


■PSYCO-NARCO [2001]
ジャケット画像
01. Galvanize
02. 427 Freak Horsepower
03. Ruse
04. Soul on a Roll
05. Begging
06. Hate The World
07. Waiting for Earthquakes
08. If I Knew What I Wanted
09. 7x
10. Big Idea Idiot
11. Mondo Balordo
12. Blowout Kit for the Underdog
13. Witness Relocation Programme
14. Million Times Nothing
メンバー画像 L to R
MEMBER NAME [XX.]
個人的評価 = 62/100
初心者オススメ度 = 20/100
再結成後第二段、通算7作目のオリジナルアルバム。パンクへの回帰を果たそうとしたのかなという感じの内容になっている。とにかく終始まっすぐだ。元々リーダーのリッキーはパンクが大好きな人だし、以前からパンキッシュなバンドではあったが、ここまでストレートにパンクっぽい作品はなかった。後半に行けば行くほどパンクな音になっていく。前作に感じたまとまりの無さってのは殆どなくなった。とにかく一貫してまっすぐでタテノリを重視したつくりである。

だが彼らの持ち味が活きてないのが残念。あまりにもまっすぐ過ぎてサラっと流れていってしまうのである。勢いのある中にも良いメロディーを乗せていた過去の作品から大事な何かを取り除いちゃった感じとでも言えばいいか。力任せに突き抜けようとした結果悪い意味での開き直りになってしまった。曲の短さもパンクへの回帰を感じさせる要素だが、それが潔さというよりも尻切れトンボな印象に繋がっている。

本作を聴いて強く思ったのは勢いのある中にも良いメロディーってのは本当に大事なんだなということだ。どんなに勢い良く突っ走ってもそこに魅力的なメロディーが無いとこんなにも退屈なのかと改めて痛感してしまった。ヘッドフォンで大音量にして聴くとそれなりに気持ち良い作品ではあるし、何度も聴いていれば従来のファンならば受け入れなれなくも無い。だが個人的に思う彼らの持つ大きな魅力はやっぱりメロディーにあるのだ。男臭いのに哀愁があって時にキャッチーなそのメロディーに。

その部分がザックリ排除されているからなんとも無愛想でそっけない作品に感じてしまった。後半では割とキャッチーな曲も顔を出すがそのメロディーが彼ら特有のモノではなくて既存のパンクバンドからの借り物的なレベルに留まっているのがなんとも言い難い。印象に残るリフが少ないのもちょっと厳しい。勢いばかりが先行して聴いていてガッツポーズを取れるようなリフが皆無に等しいのはツライ。

本作は愛があれば聴けるが新規ファンや、彼らの解散後に心が一度離れてしまったファンを振り向かせるだけのものには程遠い作品である。駄作というとちょっと可哀想だが、駄作に限りなく近い作品ではある。


[2004/03/03]
DISCOGRAPHY INDEX▲

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