HELLOWEEN


ABOUT BAND
HELLOWEENはドイツで生まれたメロディック・パワー・メタル・バンドである。音楽というものは御国柄が音に反映されることが少なくないが、彼らの場合も同様で彼らの演奏するヘヴィーメタルを指してジャーマンメタルなどと言うことが多い。まさにHELLOWEENはジャーマンメタルと言った場合に連想する音そのものであり、ここで言う『ジャーマンメタル』という言葉の持つ意味の元祖であると言っていいだろう。

スピーディーで、メロディアス、そしてそのメロディーが日本人の耳にはとても馴染みやすく、ロボットアニメの主題歌のような分かり易さが彼らの魅力であろう。彼らの音をもっとわかり易く表現すれば、後に日本で登場する色物メタルバンド、ANIMETALが実践したアニメソングとメタルの融合という要素を地で行くかのような曲が特徴なのである。その親しみやすさ故に日本では長い間根強い人気を誇っている。

リーダー的な存在だったKAI HANSENが抜け、そして彼らをB級からA級に押し上げるのに貢献したMICHAEL KISKEも抜けたあと、元PINK CREAM 69のANDI DERISが加入して楽曲に彼のセンスが加わってからは、PINK CREAM 69的な楽曲が常に収録されている。そのANDIのセンスが好きでない人はKISKE時代と評価が大きく変わってしまう部分もあると思う。私はANDIのセンスは大好きだ。なのでここではそういう嗜好の人間が書いたレビューであることを考慮して読むと、より参考にしやすいのではないだろうか。

[2003/01/07]


DETAILS >>


ORIGINAL STUDIO ALBUMS
 ■WALL OF JERICHO/JUDAS/HELLOWEEN [1989]
 ■KEEPER OF THE SEVEN KEYS PART I [1987]
 ■KEEPER OF THE SEVEN KEYS PART II [1988]
 ■PINK BUBBLES GO AGE [1991]
 ■CHAMELEON [1993]
 ■MASTER OF THE RINGS [1994]
 ■THE TIME OF THE OATH [1996]
 ■BETTER THAN RAW [1998]
 ■THE DARK RIDE [2000]
 ■RABBIT DON'T COME EASY [2003]



■WALL OF JERICHO/JUDAS/HELLOWEEN [1989]
ジャケット画像
01 - STARLIGHT
02 - MURDERER
03 - WARRIOR
04 - VICTIM OF FATE
05 - CRY FOT FREEDOM
06 - WALL OF JERICHO
07 - RIDE THE SKY
08 - REPTILE
09 - GUARDIANS
10 - PHANTOMS OF DEATH
11 - METAL INVADERS
12 - GORGAR
13 - HEAVY METAL(IS THE LAW)
14 - HOW MANY TEARS
15 - JUDAS
16 - DON'T RUN FOR COVER
メンバー画像 L to R
INGO SCHWICHTENBERG [Dr.]
MICHAEL WEIKATH [G.]
MARKUS GROSSKOPF [B.]
KAI HANSEN [Vo./G.]
個人的評価 = 78/100
初心者オススメ度 = 50/100
1985年4月にリリースされた彼らのデビューミニアルバム『HELLOWEEN』、同年にリリースされた初のフルレンスアルバム『WALL OF JERICHO』、さらにEP『JUDAS』を全て収録し、ついでにシングル『I WANT OUT』のカップリング曲だった『DON'T RUN FOR COVER』をボーナストラックとして加えたアルバム。日本では1989年にリリースされた。

つまり日本では後の名作『KEEPER OF THE SEVEN KEYS PART I & II』の後のリリースである。日本盤の初回プレス分にはティーシャツがオマケで付いていた。まだ若々しい初期のHELLOWEENはとりあえずこれ一枚持っていれば大体聴いたことになるので、とても便利なアルバムである。ここではMICHAEL KISKEがまだ加入しておらず、リードギターのKAI HANSENがリードヴォーカルを取っている。

本作ではまだまだ若々しい未成熟な彼ら。録音も荒々しく演奏も若さ爆発でリズムなども全体的に前のめりである。ここでのメロディーは後のアニメソングのような感覚はあまり強くないので最近の彼らしか知らない人には少々無愛想な印象を与えるかもしれない。スラッシュメタル的なダークさのあるリフが結構多いのもそう感じる理由のひとつだろう。さらにKAI HANSENのヴォーカルは確実に好みが分かれるクセの強いモノなので、それもまた最近の彼らに先に触れると結構キツイに違いない。ハッキリ言うと下手。

KAI HANSENはHELLOWEEN脱退後に結成したGAMMA RAYにおいてもリードヴォーカルを取っているが、そこでの歌よりもさらに荒っぽい。高音部分などはシャウトというよりも殆どヤケクソな感じすらする。しかし、楽曲はまだまだ未完成とはいえ、ここでも既に彼ららしさというモノが感じられ、アレンジにおけるセンスの良さが随所に光っている。ツインリードの奏でるメロディーや巧みなリフの組み立て方など後の飛躍を充分予感させ、本作を単なる『初期の参考資料』という風に片付けてしまうのは勿体無い。

同じような印象の曲が多いのはマイナスポイントだが、前のめりの勢いと荒々しい演奏、そしてKAI HANSENのヤケクソな歌などは、良く捉えれば非常にアグレッシヴとも言えるので、私としてはそれなりに楽しめる作品だと思っている。入門者が真っ先に買うようなアルバムではないが、彼らのファンになったならばいずれは聴いて欲しい、若さ溢れるヘヴィーメタルの力作と言えるだろう。


[2003/12/05]
DISCOGRAPHY INDEX▲


■KEEPER OF THE SEVEN KEYS PART I [1987]
ジャケット画像
01 - INITIATION
02 - I'm ALIVE
03 - A LITTLE TIME
04 - TWILIGHT OF THE GODS
05 - A TALE THAT WASN'T RIGHT
06 - FUTURE WORLD
07 - HALLOWEEN
08 - FOLLOW THE SIGN
メンバー画像 == L to R [ FRONT ] ==
MICHAEL KISKE [Vo.]
KAI HANSEN [G.]
== L to r [ BACK ] ==
MARKUS GROSSKOPF [B.]
MICHAEL WEIKATH [G.]
INGO SCHWICHTENBERG [Dr.]
個人的評価 = 90/100
初心者オススメ度 = 90/100
ニューヴォーカリスト、MICHAEL KISKEを迎えたフルレンスの二作目。バンド側はパート2と二枚組での発売を希望していたがレコード会社に反対され別々にリリースされた。現在日本盤で二枚組として発売されているモノもあるようだ。

本作は前作から劇的な進化を遂げている。楽曲の質の向上、プロデュースの向上はもちろんだが、何よりもKISKEのヴォーカルの素晴らしさが本作での進化に大きく寄与している。当時まだ18歳だったKISKEのハイトーンスタイルのヴォーカルは既に完成されていて全く不安定さを感じないのは驚かされる。

前作でのB級クサさの大きな原因のひとつとしてKAI HANSENの荒いヴォーカルが挙げられるので、KISKEの加入はバンドとしての大きな利益となったのは間違いないだろう。そしてアニメソングのようなわかりやすい高揚感は本作から本格的に感じられるようになり、ハロウィンとしての個性が明確に出来上がりつつある。

押し一辺倒だった前作から『引き』の感覚も明確に感じられ、地に足の着いたヘヴィーメタルに仕上がっているのもポイントが高い。アニメソングのようなわかりやすい高揚感を持ちながらどこか落ち着いた雰囲気も感じるのである。その要因として、この手のバンドとしては比較的手数が抑え目なドラムスタイルが挙げられる。必要以上にバタバタしないINGOのドラムは個人的にかなり好きだ。

アルバムのイントロとなる#01から#04までキャッチーでノリの良い曲が畳み掛けてくるのは非常に強力だ。しかも、勢いを殺さずに、バラエティーにも富んでいるのがスゴイのだ。この頃の彼らの楽曲は『ハロウィン印』がハッキリと刻まれている上に、散漫な印象にならない程度に1曲1曲に明確な差別化がなされている。スタイルの幅が極端に狭いヘヴィーメタルというジャンルにおいて、『自身のスタイルを保ちながら、同時に似たような曲ばかりにならない』というのを実践するのは実はかなり難しいこと。しかし本作はそれを見事に成し遂げている。

そして13分を超える大曲#07『HALLOWEEN』は本作の聴き所のひとつとして忘れてはならない。同曲のPVは勝手に短く編集されてしまったことで有名だが、実は私はそちらを先に見てしまったので、アルバムで聴いたときは無駄に長いように感じてしまい今でもその印象はあまり変わらなかったりする。PVでの編集は確かに強引なモノだったとは思うが、楽曲としてもうちょっと短くまとめることは充分に出来た曲のように思うのが正直な意見である。次作のパート2にも長い曲が収録されているので、最初からパート1、パート2に大曲をひとつずつ収録するつもりだったのだろうし、そのコンセプトはもちろん評価するが。

最後にひとつ、問題点として感じることを挙げておくと#05のようなバラード曲に少し魅力が足りない気がするのだ。まるで演歌のようなマイナー調のメロディーはとても個性的だとは思うが、もうひとつ魅力に欠けている。本作にもっと強力なバラード曲があればもっと素晴らしい作品になったのではないだろうか。

とはいえ、本作が名盤であることにはなんら変わりがない。


[2003/12/16]
DISCOGRAPHY INDEX▲


■KEEPER OF THE SEVEN KEYS PART II [1988]
ジャケット画像
01 - INVITATION
02 - EAGLE FLY FREE
03 - YOU ALWAYS WALK ALONE
04 - RISE AND FALL
05 - DR.STEIN
06 - WE GOT THE RIGHT
07 - MARCH OF TIME
08 - I WANT OUT
09 - KEEPER OF THE SEVEN KEYS
10 - SAVE US
メンバー画像 == L to R [ FRONT ] ==
MICHAEL KISKE [Vo.]
KAI HANSEN [Vo.]
== L to r [ BACK ] ==
MARKUS GROSSKOPF [B.]
MICHAEL WEIKATH [G.]
INGO SCHWICHTENBERG [Dr.]
個人的評価 = 95/100
初心者オススメ度 = 98/100
前作と対になるフルレンス三作目。これは誰もが認める名盤だろう。

KAI HANSENがヴォーカルをとっていたころから劇的な進化を遂げたパート1からさらに進化を遂げた驚くべき作品だ。実は私の音楽への明確な入り口として機能したのが本作で、あまりにも思い入れが強い故に、レビューをするコトや点数をつけるというコトが今までなかなかできずにいた。現在までにちょっとした紹介記事は何度か書いたことがあるが今回のようにハッキリとレビューを書いたのは始めてである。

前作と同じようなアルバムのイントロとなる#01から名曲『EAGLE FLY FREE』の流れだけで鳥肌モノだ。この曲でのINGOの素晴らしいドラムは要注目。彼のドラムは前作同様に『叩くべきところで叩く』というツボを抑えたスタイルであり、無駄にバタバタすることはない。しかしヘヴィーメタルとして気持ち良さを感じるレベルでのアレンジはなされているのだ。そのバランス感覚が実に素晴らしい。彼は後にこのバンドを去ったあとに自ら命を絶ってしまった。本当に残念なことだ。

つづく#03から#08まで1曲たりとも捨て曲は存在せず、しかも前作でも発揮されていた『散漫にならずにバラエティーに富む』という方向性はそのままなのは凄いことだ。そして、隅々までプロデュースされたヘヴィーメタルアルバムでありながら、本作では絶妙な生々しさが残されているのも大きなポイントであろう。キッチリと作れらているのにライブ感も同時に感じられるのである。本作での演奏の質感は後に発売されるライブアルバムと比較しても同じような生々しさを感じ取ることが出来る。

#09『KEEPER OF THE SEVEN KEYS』は前作の『HALLOWEEN』と同様に13分を超える大曲。同じ大曲とはいえその内容は『HALLOWEEN』とはまた趣をことにする。曲の冒頭から激しさを前面に出し、最後までヘヴィーメタルらしい楽曲だった『HALLOWEEN』とは対照的に静かに幕を開けるこの曲は乱暴な言い方をすればプログレッシヴロック的なところのある楽曲だ。13分の中で様々な表情を見せながらKEEPERS OF THE SEVEN KEYSの壮大な物語の幕を閉じるにふさわしいドラマティックに盛り上がる。

本作は最初から最後まで全く隙のないHELLOWEEN史上に残る名盤。


[2003/12/16]
DISCOGRAPHY INDEX▲


■PINK BUBBLES GO AGE [1991]
ジャケット画像
01 - PINK BUBBLES GO APE
02 - KIDS OF THE CENTURY
03 - BQCK ON THE STREETS
04 - NUMBER ONE
05 - HEAVY METAL HAMSTERS
06 - GOIN' HOME
07 - SOMEONE'S CRYING
08 - MANKIND
09 - I'm DOIN' FINE, CRAZY MAN
10 - THE CHANGE
11 - YOUR TURN
メンバー画像 L to R
ROLAND GRAPOW [G.]
INGO SCHWICHTENBERG [Dr.]
MICHAEL KISKE [Vo.]
MARKUS GROSSKOPF [B.]
MICHAEL WEIKATH [G.]
個人的評価 = 79/100
初心者オススメ度 = 65/100
迷いが見え始めたフルレンス4作目。

どうやら本作から微妙にアメリカ市場を意識し始めたようでこれまでの彼らとこれからの彼らの過渡期にあるために何処か中途半端な印象を受ける作品だ。その影響で音楽性の違いを感じたKAI HANSENが本作発表前に脱退、新たにROLAD GRAPOWを迎えて本作のリリースとなった。脱退したKAI HANSENはHELLOWEENで発揮していたセンスを凝縮させたような痛快なヘヴィーメタルアルバムをGAMMA RAYとして発表したが、それとは対照的なのが本作と言える。

決定的に楽曲がつまらいわけではなく彼らとしてはそこそこの出来にはなっているが残念ながらSEVEN KEYSシリーズのころのような高揚感や緊張感が減退してしまった感がある。妙にリラックスした雰囲気で明るくポップな印象なのだ。前二作のSEVEN KEYSシリーズが壮大な物語だったとすれば、本作は小さくまとまった小曲集といったところだ。それでもメロディーは魅力に溢れているし、アニメソング的なセンスがさらに強調されたために日本人にとってはますます聴きやすいだろう。中途半端だと表現したのは、小曲集としてこじんまりとまとまってしまったからであって、楽曲がつまらないという意味では決してない。

さらに中途半端な印象を受けるもうひとつの要因はプロデュースが良くないということだ。あまり奥行きを感じないシャリシャリとした平面的な音になっており、作り込んでいながらも生っぽさをしっかり残していた前二作とは雲泥の差がある。前作までプロデュースを担当していたTOMMY HANSENの方がずっと優れたサウンドを作っていたと思う。もちろん彼だけに拘る必要はないが、少なくとも本作の薄っぺらなサウンドよりもずっと魅力的なプロデュースがなされていたのは間違いない。

良い曲が揃っているのは確かだし充分に及第点を与えて良い作品だとは思うが、アルバムというひとつの作品として、芯の太さというか、一本筋が通っている感じが希薄なので聴き易い反面、聴き応えに欠けるところがあり聴き終わった後に微妙に物足りなさが残る作品である。


[2003/12/16]
DISCOGRAPHY INDEX▲


■CHAMELEON [1993]
ジャケット画像
01 - FIRST TIME
02 - WHEN THE SINNER
03 - I DON'T WANNA CRY NO MORE
04 - CRAZY CAT
05 - GIANTS
06 - WINDMILL
07 - REVOLUTION NOW
08 - IN THE NIGHT
09 - MUSIC
10 - STEP OUT OF HELL
11 - I BELIEVE
12 - LONGING
メンバー画像 L to R
INGO SCHWICHTENBERG [Dr.]
MICHAEL WEIKATH [G.]
MICHAEL KISKE [Vo.]
MARKUS GROSSKOPF [B.]
ROLAND GRAPOW [G.]
個人的評価 = 15/100
初心者オススメ度 = 2/100
通算五作目。

発売当時には聴くのに苦痛を感じるほど苦手だった。当時はヘヴィーメタルしか聴かないような人間だったので、ヘヴィーメタルという枠からはみ出した要素を含み、大きく音楽性の幅を広げた本作の魅力がわからなかっただけかもしれないと思い、ヘヴィーメタル以外の音楽も色々聴くようになった今現在にこのレビューを書くに当たり改めて聴き直したのだがそういう問題ではないのを改めて感じた。要はやっぱりツラかったのだ。

でも最初の二曲はそれなりに楽しめる出来だ。#01『FIRST TIME』では彼ららしいノリが充分感じられるし、#02『WHEN THE SINNER』ではホーンセッションの導入など思い切った試みがなされていてしかも楽曲としてもなかなかどうして悪くない。しかしそのあとはかなりツライ。HELLOWEENらしさを完全に損なった楽曲の数々は聴いていて苦痛だ。とにかく退屈。しかも中盤以降には退屈な上に時間的に長い曲が多くさらにツライ。

本作ではやけに『脱ヘヴィーメタル』、『脱ジャーマンメタル』という意識があるように感じられる。それに加えアメリカ的なセンスを導入する努力をしているようにも感じられる。それが実に不自然で中途半端なモノになった原因ではないだろうか。

結果的に全然アメリカンじゃないし、KAI HANSENが脱退したあとに音楽的にバンドを引っ張っているWEIKATHは根っからヨーロッパ的なセンスのヘヴィーメタルなギタリストなのに、そのセンスを抑えて無理をしている感じがするから聴いていてもちっとも気持ちよくない。長い楽曲や凝ったアレンジは試行錯誤と練り込みの結果なのかもしれないが、プレイヤー自身が得意とする分野からはみだしてしまった上にアルバムとしての焦点が定まっていない為にしらけたムードばかりが広がってしまうのである。

本作のプロデュースは再びTOMMY HANSENが担当し、前作よりも厚みと奥行きのあるサウンドになっている点は私としては嬉しい限りだが、楽曲の散漫さやつまらなさは私にはちょっと評価することは出来かねる。私の中では彼ら初の駄作である。


[2003/12/16]
DISCOGRAPHY INDEX▲


■MASTER OF THE RINGS [1994]
ジャケット画像
01 - IRRITATION
02 - SOLE SURVIVOR
03 - WHERE THE RAIN GROWS
04 - WHY ?
05 - MR EGO [TAKE ME DOWN]
06 - PERFECT GENTLEMAN
07 - THE GAME IS ON
08 - SECRET ALIBI
09 - TAKE ME HOME
10 - IN THE MIDDLE OF A HEARTBEAT
11 - STILL WE GO
12 - CAN'T FIGHT YOUR DESIRE
13 - BRAPOWSKI'S MALMSUITE 100
   [IN D-DOLL]
メンバー画像 L to R
ROLAND GRAPOW [G.]
ULI KUSCH [Dr.]
ANDI DERIS [Vo.]
MICHAEL WEIKATH [G.]
MARKUS GROSSKOPF [B.]
個人的評価 = 92/100
初心者オススメ度 = 95/100
ヴォーカルのKISKEとドラムのINGOが脱退し、ヴォーカルとして元PINK CREAM 69のANDI DERIS、ドラムとしてULI KUSCHを迎えて製作された通算六作目。本作は前作の迷走から見違えるような復活を果たした爽快極まりないメヴィーメタルアルバムに仕上がった。前作の出来栄えから彼らももう終わりかと不安ばかりが募っていたためにこの完成度は本当に嬉しい限りである。

日本盤のみのボーナストラックである#12、#13は出来がイマイチで少々蛇足のように思えるが、それ以外の楽曲は実に素晴らしい。本作から加入したANDIがPINK CREAM 69で発揮していた一筋縄ではいかないメロディーセンスがHELLOWEENの持ち味と見事なまでに融合し、全く違和感無く『NEW HELLOWEEN』を演出している。ANDIが加入するというニュースを目にしたときに正直、ここまで違和感無く馴染むとは思っていなかったので良い意味で裏切られた思いである。

#02『SOLE SURVIVOR』、#03『WHERE THE RAIN GROWS』の二曲はKAIがヴォーカルを取っていた初期のB級メタルだった頃の彼らが持っていたアグレッションをA級メタルとして再現しているかのようなパワー溢れる名曲である。続く#04『WHY ?』はANDIがPINK CREAM 69時代に書いた曲をそのまま持ってきた曲で、これがまた素晴らしいメロディーを持った名曲。ANDIの書くメロディーをそのままHELLOWEENに持ち込んでも全く違和感が無いのには驚いたが、それは演奏陣のセンスとANDIのメロディーセンスの相性が良かったからなのかもしれない。序盤にこれだけの名曲が畳み掛けてくると後半でダレてしまいそうだが、素晴らしいテンションは最後までしっかり維持されている。

さらに、ANDIを得て大きく進歩したモノとして、バラード曲の質が上がったということが挙げられると思う。#10『IN THE MIDDLE OF A HEARTBEAT』は泣きのメロディーが魅力的なバラード曲だが、これはANDIのペンによる楽曲だ。KEEPER OF THE SEVEN KEYS PART I の項で書いたが、これまでの彼らのバラード曲はもうひとつ魅力に欠けていたと思うのだが、ANDIの加入によりその弱点が見事に補われている点に注目したい。


[2004/01/06]
DISCOGRAPHY INDEX▲


■THE TIME OF THE OATH [1996]
ジャケット画像
01 - WE BURN
02 - STEEL TORMENTOR
03 - WAKE UP THE MOUNTAIN
04 - POWER
05 - FOREVER AND ONE [NEVERLAND]
06 - BEFORE THE WAR
07 - A MILLION TO ONE
08 - ANYTHING MY NAME DON'T LIKE
09 - KINGS WILL BE KINGS
10 - MISSION MOTHERLAND
11 - IF I KNEW
12 - THE TIME OF THE OATH
13 - STILL I DON'T KNOW*
14 - TAKE IT TO THE LIMIT
メンバー画像 L to R
ROLAND GRAPOW [G.]
ULI KUSCH [Dr.]
SNDI DERIS [Vo.]
MICHAEL WEIKATH [G.]
MARKUS GROSSKOPF [B.]
個人的評価 = 90/100
初心者オススメ度 = 92/100
前作が素晴らしすぎたので、それに続くアルバムはどのようになるのか心配な面があったが、そんな心配は全く不要だったことを思い知らされる名盤が再びここに誕生した。前作の方向性はそのままに、さらに楽曲の質を向上させたのが通算七作目である本作だ。ただ終盤で少しテンションが落ちてしまうのはちょっと残念。しかしその終盤に至るまでに収録されている名曲の数々がそれを補っているので問題ない・・・と私は評価している。

#01『WE BURN』のテンションの高さ、#02『STEEL TORMENTOR』のイントロでのギターアレンジの素晴らしさ、#03『WAKE UP THE MOUNTAIN』での緊張感、それらを耳にすると『メタル好きでよかった!』と思わず拳を握り締めてしまう。

そして#04『POWER』はHELLOWEEN屈指の名曲だ。この曲は実にANDIらしい素晴らしいメロディーを持った曲・・・・かと思いきや、クレジットを見るとこれはWEIKATHが書いた曲である。この曲はクレジットを見なければ多くの人がANDIの曲だと思うに違いない。つまり彼がPINK CREAM 69で発揮していたメロディーセンスにかなり近いのである。前作で言うところの『WHY ?』と同系統の曲だ。この曲を聴いて思ったが、ANDIは自らの作曲センスをHELLOWEENに持ち込んだだけでなく、他のメンバーの曲作りにも直接的に影響を与えているのかもしれない。

続く#05『FOEVER AND ONE (NEVERLAND)』はANDIの書いたバラード曲。退屈しない安定したバラード曲を書けるANDIの加入はやはり大きな利益だったと改めて感じさせてくれる感動的な曲だ。#06『BEFORE THE WAR』では初期の彼らのセンスがそのまま復活したようなアグレッシヴな曲で盛り上げておいて、今度は#07で少しテンポを落としながらも壮大さを感じさせる展開の曲をもってきて、#08ではANDI節が炸裂し、#09で再び初期っぽいセンスの曲・・・といった具合にここまでは一気に突き抜けていくパワーがある。しかし、#10からは少しパワーダウンしてそのまま最後まで行ってしまう。そこまでは前作を越えるクオリティーを誇っている曲が畳み掛けてくるがそれが最後まで続かなかったのは非常に残念。

もうひとつ残念なところはプロデュースがあまり良くないことだ。何故かドラムの音の抜けが良くなく、篭ったような音質となっている。プロデュース的には明らかに前作の方が勝っていると言える。折角多くの名曲が収録されているのに、この音質のせいでアルバムとしての印象が少しだけ悪くなっているのは否めない。というわけで、総合点としては前作よりも少し低くなっているが前作よりもクオリティーの高い曲が多いのは間違いない。


[2004/01/06]
DISCOGRAPHY INDEX▲


■BETTER THAN RAW [1998]
ジャケット画像
01 - DELIBERATELY LIMITED
  PRELIMINARY PRELUDE PERIOD IN Z
02 - PUSH
03 - FALLING HIGHER
04 - HEY LORD!
05 - DON'T SPIT ON MY MIND
06 - REVELATION
07 - TIME
08 - I CAN
09 - A HANDFUL OF PAIN
10 - LAVDATE DOMINUM
11 - BACK ON THE GROUND
12 - MIDNIGHT SUN
メンバー画像 L to R
ROLAND GRAPOW [G.]
ULI KUSCH [Dr.]
SNDI DERIS [Vo.]
MICHAEL WEIKATH [G.]
MARKUS GROSSKOPF [B.]
個人的評価 = 85/100
初心者オススメ度 = 78/100
通算八作目。

本作は#01のオープニングのインスト曲を経て#02『PUSH』でいきなりスラッシーな曲が飛び出してきてちょっと驚かされる。これは初期のころとはまた違うアグレッシヴさを持った曲だ。この曲はドラマーであるULIによる曲。前二作では作曲面でANDIの活躍が目立ちWEIKATH&ANDIが音楽的な主導権を握っている印象が強かったが、本作では全てのメンバーが作曲面で大きく貢献しており、バラエティーに富んだアルバムに仕上がっている。

前二作は間違い無く名盤だったと思うがそれぞれが全く同一の方向性だった。そして本作においては前二作の路線を保つことはせず、ヘヴィーメタルバンドとして新たな方向性を少しずつ模索し始めていているといった印象を受ける。それ故に少しばかり曲にムラがあるように感じる部分があるが、かつての駄作『CHAMELEON』で見せた迷走とは根本的にその性質を異にするので決してファンをガッカリさせるような内容ではないだろう。

バラエティーに富んでいるのは確かだが、彼ら以外の何者でもないというHELLOWEENの王道ソング#03『FALLING HIGHER』のような曲もしっかり存在するし、HELLOWEENがANDI加入によって得たPINK CREAM 69テイストを発揮している#08『I CAN』などもあって、安心して聴ける部分が多いのは嬉しい。私としては『I CAN』のような曲はずっと書き続けて欲しいと思う。ハイテンポで駆け抜ける中にこのようなANDIのセンスを反映した湿り気のある曲が混ざるとアルバムにメリハリがつくように思うからだ。

前二作と比べて少し試行錯誤の様子が垣間見える点で不安定さを少しだけ感じるが、トータル的には充分合格点をあげて良いヘヴィーメタルの佳作アルバムである。


[2004/01/06]
DISCOGRAPHY INDEX▲


■THE DARK RIDE [2000]
ジャケット画像
01 - BEYOND THE PORTAL(INTRO)
02 - ALL OVER THE NATIONS
03 - MR.TORTURE
04 - ESCALATION 666
05 - MIRROR,MIRROR
06 - IF I COULD FLY
07 - SALVATION
08 - THE DEPARTED[SUN IS GOING DOWN]
09 - I LIVE FOR YOUR PAIN
10 - WE DAMN THE NIGHT
11 - IMMORTAL
12 - THE DARK RIDE
13 - THE MADNESS OF THE CROWDS
メンバー画像 L to R
ROLAND GRAPOW [G.]
ULI KUSCH [Dr.]
SNDI DERIS [Vo.]
MICHAEL WEIKATH [G.]
MARKUS GROSSKOPF [B.]
個人的評価 = 89/100
初心者オススメ度 = 78/100
前作で垣間見えた新たな方向性の模索が明確に表に現れた通算九作目。

#01から#02、#03への流れはお得意のパターンで過去の彼らと大きな変化は感じられないがその後は今までに無いタイプの曲が多く登場する。アニメソングのようなメロディーを得意としていた彼らとしては少々ダークでヘヴィーな印象を受ける楽曲が多い。#04『ESCALATION 666』のイントロなどはヘヴィーロック的な引きずるような重たいリフで、歌メロの方もメジャー系の明るいメロディーが抑え目となっており、本作の方向性をわかり易く示している一曲といえる。

本作は一直線に最後まで疾走する曲が少ないので一聴するとヘヴィー志向に傾き、楽曲が面白くなくなり、彼らの持ち味が死んでしまったかのように思える部分があるかもしれない。しかし、じっくり聴き込んでみると各楽曲は非常に練り込まれており、聴き終わった後に良い意味での疲労感が残る『濃い』アルバムであることに気づく。音楽的にそっくりになったという意味ではないが、DREAM THEATERのヘヴィーな曲を聴いたときの疲労感に近いものがある。

ただ本作はANDIの楽曲が半分以上を占めていて、彼お得意のPINK CREAM 69的なメロディーも多いので、彼が加入してからの『HELLOWEENが演奏するPINK CREAM 69』的な曲が好きではない人は結構キツイかもしれない。とは言っても彼自身が新たなセンスを発揮している曲もある。#06『IF I COULD FLY』はLINKIN PARKのようなメロウさを持った曲で、ANDI節でありながらも同時に新しい感触も感じられる。個人的にはかなり好きな曲である。

これまでのHELLOWEENは一聴すれば良さがわかる即効性の高さが魅力のひとつだったと思う。本作は即効性の高い楽曲を残しつつ、聴きこむ事で味の増す楽曲も加えて来た彼らとしては新境地のアルバムである。しかし、正直なところ、ヘヴィーメタルというジャンルは極端にその音楽的な幅が狭いモノなので、メタル以外の音楽も多く聴く私としては、これでも充分『相変わらず』な音楽なのだが。

[2004/01/07]
DISCOGRAPHY INDEX▲


■RABBIT DON'T COME EASY [2003]
ジャケット画像
01 - JUST A LITTLE SIGN
02 - OPEN YOUR LIFE
03 - THE TUNE
04 - NEVER BE A STAR
05 - LIAR
06 - SUN 4 THE WORLD
07 - DON'T STOP BEING CRAZY
08 - DO YOU FEEL GOOD
09 - HELL WAS MADE IN HEAVEN
10 - BACK AGAINST THE WALL
11 - LISTEN TO THE FLIES
12 - NOTHING TO SAY
13 - FAST AS A SHARK
メンバー画像 L to R
STEFAN SCHWARZMANN [Dr.]
MICHAEL WEIKATH [G.]
ANDI DERIS [Vo.]
MARKUS GROSSKOPF [B.]
SASCHA GERSTNER [Dr.]
個人的評価 = 75/100
初心者オススメ度 = 59/100
ROLAD GRAPOWとULI KUSCHをクビにして、ギターにSTEFAN SCHWARZMANN、ドラムにSASCHA GERSTNERを加えての通算十作目。

彼らの作品としては濃い印象だった前作を経てさらに濃いモノを作るのかと思いきや、今度は疾走曲が多い非常にわかり易い方向性を持ったアルバムとなっている。原点回帰などという評価もあるようだが、スラッシュメタルのような疾走感を持った#05『LIAR』は単純に原点回帰では片付けられないタイプの曲である。この曲のアグレッションはかなりのモノで、ある種の気迫のようなものを感じる。彼らのファンの中では評価が分かれそうな曲でもあるが、私としてはこの曲の気迫、緊張感、アレンジのセンスは高く評価したい。

全体の方向性としては安心して聴ける『相変わらずなHELLOWEENN』を楽しめるが、#12『NOTHING TO SAY』だけが妙に浮いている変な曲だ。この曲はWEIKATHが書いた曲。はじめて聴いたときは一瞬あの駄作『CHAMELEON』の頃の間違った実験心がよみがえったのかと不安を感じたが、ちゃんと聴いてみるとこれはこれで実は結構好きだったりする。『CHAMELEON』の頃はもっと根本的なところの歯車がずれていたと感じる。

この曲は充分ヘヴィーメタルだし、面白い曲だと思うし、こういう実験的な曲が1曲くらい入っていても良いと思う。でもこの曲の評判は至極悪いようで、やけに批判が目立つ。たかが一曲この程度の変化の曲があるだけでギャギャー騒ぐのはやっぱりヘヴィーメタルファンの許容範囲の狭さの証なのだろうか。本作において私がそれよりも問題だと感じるのは、全体的にメロディーの魅力が下がっていることだ。悪くは無いが絶賛出来るようなレベルの突出した楽曲が少ないのだ。アルバムを通して聴いていると何となく流れていってしまう。アレンジ面でもグっと来るフレーズが少ないのもその要因だろう。

駄作呼ばわりされるような作品では決して無いがあと一歩何か足りない、そんな作品。

[2004/01/07]
DISCOGRAPHY INDEX▲

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