テーブル上

サイキンノテキスト
テキスト

 ■[ 雑記 ] 2008/01/03 [ Thu ]



ども。アイバです。

新年早々、とてもとても悲しい出来事がありました。だから新年のお祝いの言葉は言えません。まだここにこの出来事について書くのも正直つらいですが、忘れちゃいけないことだと思うからあえて書いています。

実は、1月1日にウチの愛犬ミニチュアピンシャーの巫女が亡くなりました。

あまりに突然に。まだ7ヶ月しか生きていないのに。

俺たちは2007年12月31日にケイコさんの実家に行く為にフレンチブルドッグの和尚とミニチュアピンシャーの巫女を、いつも利用しているペットショップのペットホテルに預けることにしました。そして年が明けて2008年1月1日の夜に元気な和尚と巫女を返してもらう予定になっていました。

ところが。

1月1日の15時頃、ケイコさんの実家の方で楽しくショッピングをして、ミスタードーナツでお茶をしようと店内の席についたとき、ケイコさんの携帯がなりました。電話に出たケイコさんが『え!?』と一言発した後に絶句。それを見ていた俺はすぐに彼女と電話を替わりました。

電話の相手は和尚と巫女を預けていたペットショップの店長でした。そして彼がこう言いました。『巫女ちゃんが事故にあって・・・・・・亡くなってしまいました』と。一瞬頭が真っ白になり体中が震えて言葉を失いました。

バイトの女性が和尚と巫女を散歩させているときに、おしっこの処理に気をとられて巫女のリードだけが手から離れてしまったと。そして道路に飛び出した巫女が車にはねられたと。それを聞いた俺はわけがわからなくなり、かなり酷い言葉を相手に発した覚えがあります。

その日はもうちょっとケイコさんの実家の方でゆっくりする予定だったのだけど、とにかく帰ろうということになり、ミスタードーナツで頼んだモノには手をつけずにすぐに店を出て一度ケイコさんの実家に戻り、急いで荷物を車に積んでそのペットショップに直行しました。

店に着くと毛布が敷かれたダンボールに入った巫女の遺体を見せられました。店長と、巫女を散歩させていたバイトの女性、さらにその他のスタッフが全員その場で土下座して謝ってきました。ただただ謝る店のスタッフたち。ケイコさんは巫女の遺体にすがり付いて号泣。俺は呆然と立ち尽くすのみ。店に着く前は沢山の罵声を浴びせてやろうと思っていたけど言葉が殆ど出てきませんでした。

混乱していた俺たちは、結局あまり詳しい説明も聞けず、こちらの思いを伝えることも出来ず、明日連絡してくれと言って巫女の遺体と和尚を引き取ってその日は家に帰りました。家に帰った後、俺とケイコさんはずっと泣いていました。前日までピョンピョン飛び跳ねて元気にしていた巫女が死んでしまった事実を受け止めることが出来ずに涙が止まりませんでした。

それでも巫女の遺体をそのままにはしておけないので、家でいつも巫女が使っていた毛布をかけてやり、身体が痛まないように保冷剤も入れてやりました。そして家の中で一番寒い部屋に安置してやりました。その後、ネットで犬などのペットを火葬してくれる業者を探し予約をしました。2日の昼頃に来てくれるとのことでした。

巫女の死に顔は元気なときと全然違った。外傷は殆ど無く綺麗なままだったけれど、生気を失ったその目を見て涙が止まりませんでした。家につれて帰ったときにはもうすっかり冷たくなっていて、身体もカチカチになってしまっていました。とにかく巫女の死が信じられませんでした。つい昨日まであんなに元気だったのに。

もっともっと色んなところに連れて行ってやりたかった。巫女とはこれから10年以上一緒にいられるはずだった。今年生まれてくる予定の俺とケイコさんの子供や和尚と一緒にずっと楽しく暮していくつもりだった。それが何故こんなことになったのか。怒りとか、悲しみとか、後悔とか、色々な感情が混ざり合ってずっとずっと泣き続けていました。

1月2日の朝、8時くらいに起きてケイコさんと二人で巫女の為に花を買いに行きました。そのときに、巫女の写真を飾るためのフォトフレームなんかも一緒に買いました。買い物の途中、10時半くらいにケイコさんの携帯へペットショップの店長から電話が入りました。そこで俺は巫女の火葬が済んだらこちらから連絡するから待っていて欲しいと伝えました。

巫女のものを買った後はスーパーに立ち寄り、和尚のご飯を作るために食材を購入。そのスーパーにはその場で画像の印刷が出来る機械があったので、それを使って巫女の写真を何枚か印刷しました。家に戻ってから、俺は和尚のご飯を作ったり食べさせたりして、ケイコさんは火葬された後の巫女の居場所を整えたりしてました。

今年の年賀状には俺とケイコさんに加えて巫女と和尚の写真を載せていました。火葬業者が来るまでの間、いつの間にか余った年賀状にケイコさんが巫女へのメッセージを書き込んでいて、それがテーブルの上に置いてありました。ケイコさんはそれを巫女の遺体と一緒に焼いてもらうつもりだったようです。そこに書かれていたメッセージを見た俺は不覚にも声を上げて号泣してしまいました。

『虹の橋で待っててね。』

ケイコさんは巫女にそうメッセージを書いていました。

虹の橋。それはね。元々は海外の文章で作者は不明のままらしいのだけれど、何処かの誰かが書いたお話に出てくるモノです。

この世で人間に可愛がられていたペットたちが亡くなった後、彼らはみんな天国の少しだけ手前にある虹の橋に行くの。そこには沢山の仲間がいて、病気だった者、年老いた者もみんな健康で元気な姿になり、みんなで楽しく走りまわってる。

多くの動物たちは人間よりも寿命が短いから先に亡くなってしまう。だけど、この世で自分を可愛がってくれた人が来るまでその虹の橋で待っててくれるんだって。そして少し遅れてきたその人にそこで再び出会ったら、一緒に虹の橋を渡って天国に行く。

そんな素敵な話があるんです。

それは何処かの誰かが考えた作り話なのかもしれない。だけれど、今の俺たちはそれを信じたい。巫女が虹の橋の手前で仲間たちと楽しく走り回りながら俺たちが行くのを待っているって思いたい。

そんなことを考えているうちに火葬業者の人が来て巫女の身体は灰になりました。もちろんケイコさんが書いたメッセージも一緒に焼いてもらいました。そして巫女の遺骨は綺麗な壷に入れてもらい遺影も用意してもらいました。さらに、巫女の遺骨を少しだけ入れておけるペンダントみたいモノも貰いました。

巫女を送り出した後、ペットショップの店長に電話をして家に来てもらい色々話を聞きました。まずは事故の様子。とにかく事実が知りたかったから。それからどういう形で誠意を見せるつもりでいるのか。それについてはあえてこちらからは注文を出さずにまずは相手がどう考えてきたか話を聞きました。

基本的にはそれをそのまま受け入れることにしました。ただ、いくつかこちらからお願いをした。もう二度とこういうことが無いように店の運営の仕方を見直して欲しいということ。巫女を死なせたことを絶対に忘れないで欲しいということ。

さらに、ペットショップのホームページに謝罪文を掲載すること。それについては相手の誠意を見たくて要求を出しました。信用が重要なペットホテルで今回のような事故の事実を客に告知することが店にとってどれだけ打撃になるかは俺だってわかっています。だから、相手が誠意を見せて載せると言った時点で『その気持ちだけわかればそれでいいから実際に載せる必要は無い』と伝えました。

だけど店長は店が打撃を受けても良いから載せたいと言っていました。俺は店長に、『今後どうするかはそちらに任せる。もし載せなかったとしてもそれについて何も言うつもりはないし、そちらの誠意は理解している。これ以上責めるつもりは無いし恨んでもいない。ただこの事故のことは忘れないで欲しい』と伝えました。だから謝罪文についてはどうなるかはわからないし、こちらからそれについて口出しをするつもりは一切ありません。

ただ、この事故のことを忘れないで欲しいのです。
ホント、それだけは強くお願いした。

さっき、和尚を散歩に連れて行ったら、いつもポメラニアンを連れている近所のお姉さんに会った。今日は巫女がいないんだねって言われたから事情を話した。お姉さんは凄くびっくりしてた。正直、まだ他人に事情を話せるほど気持ちの整理が出来ていなかったから、説明するのがつらかった。巫女を死なせたペットショップのスタッフ達はこういう気持ちをどれだけ理解してるんだろう。

店にとっての巫女は客が連れてくる多くの犬の中の一匹にすぎないかもしれないけれど、俺たちにとって巫女は唯一の愛犬なんです。この先、10年以上一緒に過ごすはずだった家族を失ったんです。店のスタッフにその気持ちがどれだけ伝わったのかな。

巫女が家に来た日のことは今でもよく覚えています。ケイコさんと買い物に出かけていたある日、何となく立ち寄ったペットショップで巫女に出会いました。その頃は丁度、和尚に相棒がいたら楽しいかななんて話していた時期でした。

とはいっても、その日は特別そういう犬を探しに行ったわけではなく、本当に『何となく』ペットショップを覗いてみただけだったんです。しかも、和尚の相棒には和尚と同じフレンチブルドッグを考えていたのでミニチュアピンシャーを飼う事なんか全く想定していませんでした。

だけどね。

店のお姉さんに巫女を抱かせてもらったら何故かピンと来てしまったんです。理由はわからない。ただ何となくピンと来たの。巫女のつぶらな瞳を見ていて『コイツだ!』って思ったの。それでケイコさんに『こいつを飼おう』って話して、その日のうちに連れて帰ってしまったんです。正直、和尚との相性が心配だったけど、何故か大丈夫な気がしてそのまま連れて帰ってしまったんですよ。ホント、理由は良くわからなくってさ。『縁があった』としか言いようが無いんだよなぁ。

でもやっぱり巫女は和尚と比べて凄く小さくて細いので最初は心配でした。だけど、和尚は巫女とジャレ合うときには明らかに手加減をしてくれていて、今までに無いくらい楽しそうに遊んでくれました。以前よりもずっと良い意味でヤンチャなワンコになったように思えました。そして、日が経つに連れて巫女は和尚に寄り添って眠るようになりました。本当に仲良しになってくれたんです。

巫女は和尚のことが大好きで、和尚が寝ていると必ず和尚に寄りかかって寝てました。二匹は散歩のときもいつも一緒。寝るときも一緒。見た目は両極端だけど、凄く良いコンビでした。

和尚は以前、俺たちと一緒に伊豆に旅行に行ったことがあります。だから今度は和尚と巫女を両方連れて旅行に行きたいね、なんてケイコさんとよく話していました。だけど、その願いはかないませんでした。俺たちの間に今年生まれてくる子供にも会わせてあげられなかった。

和尚はね。巫女がいなくなってから妙に大人しいんです。いつもは散歩になかなか連れて行かなかったりすると遊んでくれって騒ぎ始めたり、イタズラをし始めたりするのに、巫女がいなくなってからのこの二日間、寝てばっかりいるんです。和尚も寂しいのかな、なんて考えるとまた涙が出てきてしまいます。

俺は、こういう思いが、今回の事故を起したペットショップのスタッフ達に伝わっていることを切に願います。


和尚と巫女
これが巫女の最後の写真です。12月31日にそのペットショップに行く途中に車の中で撮影した写真。こんなに目をキラキラさせた巫女がこの翌日にあんな死に方をするなんて全く想像しなかったよ。

巫女、安らかに眠ってください。巫女、ウチに来てくれてありがとう。楽しかったよ。巫女のことは絶対に忘れないからね。俺たちはみんな、もう少しこっちで精一杯、巫女の分まで生きた後、必ず会いに行くからね。


それまで少しの間待っていてね。


天国の手前にある虹の橋で。
テーブル下
メニュー


■巫女のこと











ホームページに戻ります。

テーブル