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『情けは人の為ならず』という諺 - 2003/05/03 [Sat]

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『情けは人の為ならず』という諺があります。とても有名な諺ですよね。これは、人の為に何かをしてあげるということは単に他人のためではなく後々自分自身が困ったときにそれが助けとして返って来るものだ、という感じの意味の諺です。ホント、昔の人は上手いこというなあと思います。


でもこの諺。自分が困ったときに助けてもらえるようにまずは他人に恩を売っとけ、みたいなニュアンスにも取れる言葉です。なんか腹黒い感じ。いわゆる『偽善』というモノを表す言葉のようにも取れる。ひねくれた人はそういう受け取り方をするかもしれないですよね。だけど俺はそういう風には捉えたくないです。この諺が表す『自分に返って来るモノ』というのは必ずしも明確な助けの手だとは限らないと思うからです。


以前こんなことがありました。


ある日、俺は家の近所のタバコの自動販売機にタバコを買いにいったんですね。すると70代くらいのおじいちゃんが自動販売機の前で首をかしげているんですよ。で、俺はしばらくその様子を黙って見てたんですが、俺の存在に気づいたおじいさんが『あ、すいません』と言いながらお金の返却レバーに手を伸ばしてお先にどうぞ、みたいな雰囲気になったのです。で、俺はそのまま黙ってタバコを買って立ち去っても良かったのですが、おじいさんがお金の返却レバーを引く前に『どうしたんですか?』と尋ねてみました。


するとお金を入れてからタバコを買おうとボタンを押してもタバコが出てこなくて困ってるとのことで。で、俺が『銘柄はどれです?』と再び尋ねたところ、センブスターが買いたいとのことなので、俺はセブンスターのボタンのところを覗き込んでみました。そこには『売り切れ』の文字が。その時は真昼間でしかもボタンのランプの光がとても弱かったのでその売り切れの文字に気づかなかったようで。『あれれ。売り切れですねー。残念。他の銘柄なら買えますけど?』と俺が言うと『ああ、結構です。ありがとうございました。』と言いながらそのおじいさんは笑顔で会釈しながらお金を返却して去っていきました。


以上のエピソードは物凄く他愛のないこと出来事です。しかし、その出来事の後、俺はとても気持ちよく一日を過ごせました。実はその時の俺は色々と上手くいかないことがあって割りとイライラしていたのですが、自分に生まれたちょっとした親切心によって生まれたおじいさんの笑顔と『どうもありがとうございました』という言葉がとても俺を優しい気持ちにしてくれたのです。俺は『情けは人の為ならず』という諺はそういうことなんじゃないかなあと思うのです。つまり、他人に少しばかりの思いやりを持って接する事で自分自身の気持ちも浄化される、それがここでいう『自分に返って来るモノ』なのではないかと。それは必ずしも目に見える『助けの手』ではなく気持ち的なモノも含むのではないかと。


『心が優しいから他人に親切に出来る』わけではなく、『他人に親切にすることによって心が優しくなる』のではないかしら。逆に言えば『心が優しくないから親切に出来ない』のではなく『親切にしないから心が優しくならない』という。でも、それですら自分の親切心に酔っているだけの偽善者である、という考え方をする人もいるかもしれませんね。でもね。たとえそれが偽善であったとしても、文句ばかり言って何もしない人よりはずっとマシなんじゃないですか? 何もしない人が一番最低なんじゃないですか? 俺はそう考えます。


高校の時の友人で、海外協力青年隊だかなんだかのボランティアに参加したいと言っている女の子がいてね。その子に対して『本当に海外の貧しい子供たちを助けたいなら働いて金を寄付しろ。お前がしたいのは海外協力青年隊に参加して自己満足したいだけなんだろ?それは偽善だ。そんなのしたって意味が無い。』と言ってるヤツがいたんだけど、その発言が妙に腹立たしかったのを今でもよく憶えてますね。何もしないお前よりずっとマシなんじゃねーか?ってね。言わなかったけど。


と最もらしいことを言ってますが、実際俺自身が他人への親切心を常に配慮できているわけじゃないです。ここで述べたおじいさんのエピソードの時は自然な流れで声をかけてあげられましたけど、人が困ってるのを黙って見過ごすことも正直あります。人がいっぱいいるところで正面切って知らない人に話しかけて手助けをすることが妙に恥ずかしいというか、面倒なことのように思えるときがあるんですね。電車なんかで年寄りが目の前に来ると寝たフリをする人たちもそんな心境なんでしょうきっと。でも、そゆことをすると気持ちが少し曇っていくのが自分でわかるときがあるんですよね。だからもっと他人への思いやりというのは大事にしていきたいと思う俺なのです。


俺にとって『情けは人の為ならず』というのは座右の銘のひとつです。


たまたま街で出会った知らない人が困ってるところを自然に手助けしてあげるというのはなかなか難しかったりするんだよなー。その時の気分で『俺の知ったこっちゃ無い』と思ってしまうことは実際あるし。まだまだ全然ダメな感じです俺は。まあ、だからこそ座右の銘なんだけどさ。生きるうえでの目標のひとつみたいなもんですね。


でもさ。以前さ。妊婦さんが電車に乗ってきたので席を譲ろうと声をかけたら『あ、結構です。』とサクっと断られて言わなきゃ良かった、とすげえ後悔したこともあったりしますが。余りにもスッパリキッパリ断られるとすんげえ恥ずかしいんだよなああいう場合。譲ってんだから素直に座っとけっつうの。ウラー。


人の親切を無駄にしやがるヤツは後が怖いぞ? ぁあ!?
(あれ? 発想が間違った方向に行ってる気が)



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