topimg音楽日記 2002/03


★2002/03/06 (Wed)
jake
Suicide By My Side / Sinergy


今年の6月に来日が決定してるSinergyのサードアルバムです。音はいわゆるアイアンメイデン系のツインリードがハモリまくりの疾走感溢れるヘヴィーメタル。このバンドの音はホントにメイデン直系です。日本盤のボーナス・トラックにはThe Number Of The Beastが入ってるし。


元々はヴォーカルが女性ということで全然聴く気が無かったバンドなんですよね、実は。すごくバカにしてた。何だかんだ言ってもヘヴィーメタルに女性のヴォーカルを乗せて違和感があるだけの方が多いだろうし、演奏がカッコよくても男ヴォーカルだったらもっと良いのにって思っちゃうだろうなって。


けど、このバンドは違ったのです。マジびびりました。


新宿のディスクユニオンの5階にあるメタルフロアで何を買おうか迷ってる時に大音量でかかってたアイアンメイデン直系メタルがすっごくカッコよくて、これなんだろうって思いながらレジの前の今流してるCDのケースが立てかけてあるところを見にいったらこのアルバムだったんですよね。


マジびびりました。


『あれ?このバンドってヴォーカルが女性のバンドじゃなかったっけ?』って思ったんですよ。店内で流れてきたバンドが女性ヴォーカルであるとは思わなかったの。ハイトーンの男性ヴォーカルのバンドだと思ってたの。今は女性ヴォーカルであるのをわかって聴いてるから確かに女性だって思えるけど、初め聴いたときはパワフルな男性ハイトーンヴォーカルだって思ったのよ。


昔いたヴィクセンというL.Aメタル系の音を出す女性ハードロックバンドがいたけど、ああいう感じの女性らしさを武器にしたハードロックは嫌いじゃなかったけど、ヘヴィーメタルという領域の中だとどうも女性ヴォーカルって良い方向に作用しない気がしてね。男性ヴォーカルの方が良いに決まってるって思う方だから、俺は。男女差別とかじゃなくてやっぱ向き不向きってのはあると思うのよね。


例えば女性がデス声で歌ってるの聴いても引くだけなんだよな。デス系の声で歌うんだったら男性の方が向いてるに決まってるし、そこにあえて女性を起用するっていう感覚が俺にはわからないのです。男性と女性じゃそもそも声帯の作りが違うんだから。そんな考えをもってる俺なのですけど、このバンドはそういう問題じゃなかった。もちろんこのバンドはデス声じゃないけど、パワーというのが重要な要素となるであろうこの手の音に女性の声が乗ってもなあって思ってたのは確かなのです。


だけどホントにそういう問題じゃなかった。全然違和感が無いのよ。女性が男性的に無理して頑張ってるっていう香りが全く無い自然なパワーを発散しているのです。『自分らしく歌ったら結果的にこうなった。』という風に自然に受け入れられるレベルになってるのよ。俺は音を聴いた後にヴォーカリストのキンバリー・ゴス嬢のルックスを目にしたのですけど、ますます好きになりました。めっちゃ良いキャラ。たまんないっすよ、これは。ちなみにファーストの裏ジャケではかなり綺麗っぽく写ってる写真が採用されてて多くの人が騙されたらしいです。あは。


俺がメタルの領域で女性ヴォーカルに違和感を感じるのはやっぱり『男性的に歌おう』っていう意識が感じられるからなんだと思う。だけどこのバンドのように『自然にこうなった』っていう感じなら全然オッケーです。キンバリー嬢は本当に素晴らしいヘヴィーメタルヴォーカリストですよ。しかも演奏も曲も素晴らしいと来たら文句なんて無いです。基本的にコンパクトにまとまった楽曲、疾走感を重視したノリ、素晴らしいメロディー。メイデン系のメタルに俺が求める要素が全部入ってる。全部美味しいのです。


こんなに冴えてるメタルアルバムはそう滅多に無いです。


このアルバムでは前述したようにはじめは男性のハイトーンヴォーカルかと聴き間違えた程の声質になってるんだけど、これの前のファーストとセカンドは1回聴けばすぐ女性ってわかる声質です。だけどそれでも違和感は無かったね。特にセカンドはこのサードに勝るとも劣らない出来です。ファーストは少しヴォーカルが弱いし、曲もセカンド・サードよりちょっと弱い印象を受けたな。


キンバリー嬢はアルバム毎に確実に成長してるのがハッキリとわかるし、楽曲も確実にレベルアップを続けてるバンド。このバンドは他のバンドと掛け持ちでやってるメンバーが多いので、ちょっと先行きがどうなるのか不安もあるんだけど、そんな事はひとまず忘れて応援したいって思えるんですよね。マジ大絶賛。だってダメな部分が見当たらないんだもん。


このアルバムが好きじゃないならメタルなんか聴くの止めちまえ。




あえてそんな極論で文章をしめたい気分にさせるアルバムです。


★2002/03/10 (Sun)
jake
The Convincer / Nick Lowe


パブロック出身のニック・ロウの現時点で一番新しいアルバムです。2001年リリース。っていうかパブロックっていうカテゴリーが未だにわかってない俺なのですけど。彼の初期のソロ作品や、ロックパイル名義でリリースされたアルバムも持ってるのですけど、それらを聴いても『こういうのがパブロックっていうのか』っていう風にすぐ思えないっていうか。


ニックの初期作品は50年代のロックンロールを下敷きにしたような、それでいてビートルズの洗礼も受けているようなそんなポップなロック。余計な贅肉がとにかく付いていないシンプルな曲ばかりで濃厚な音楽を好む人にはなにも引っかかるものがないであろう音。だけどポップで親しみやすいのでそこに『お!』と思えれば楽しめると思うよ。


若き日のエルビス・コステロがニックに憧れてコステロは彼の周りをウロウロしてて、その結果コステロのデビュー作はこのニックが手がけてるんですよね。どっちかっていうとそっちで有名なのかもしれませんね。


初期の頃はそれなりに弾けるポップな曲もやってたニックですけど、近年の作品ではもうすっかり落ち着いちゃって。この作品も同様で弾ける曲なんか1曲もありません。ジャズのカヴァーがあったりしてしっとりと聴かせる曲ばかりで構成されています。ジャジーだったり、ちょっとカントリーだったりするリラックスした雰囲気の漂う地味〜なポップスとでも言うのかな。


とにかく地味。曲を構成する音数は非常に少なくて必要最小限にとどめられているし、ニックの歌もドンくさい感じでとてもオヤジっぽい。間違い無くこれは売れない、というオーラが出まくりです。だけど、何度も聴くと実に暖かい。ニックのオヤジくさい声といい、隙間だらけの音といい、なんだか心地よいのです。セールス的な成功とは全く無関係でゆっくりじっくり年を重ねたミュージシャンだからこそ出せたと思える全く気張りのない音がとても心地よいのです。


音楽シーンという大きな流れとは全く無関係のところで何十年もジックリと自分の出来ることを自分のペースでやりつづけるっていうのは実際そう簡単なことじゃないと思います。だからこそ、そこから滲み出る落ち着いた温かみというのはとても心に染みるのだなって強く思います。そんな心に染みる12の曲が収められた隠れた名盤として俺はこの作品を大事にしていきたいと思います。


けどさー。


『流行っている音楽だけでは、出会えないものもある。』っていう帯タタキはどうかと思うぞ。切ないぞ。帯に太字でデカデカとわざわざ書くなってば。宣伝してるんだかケナしてるんだかわかんねーんすけど。ニック本人がこの帯タタキをみたらどう思うんだろ。


★2002/03/14 (Thu)
jake
Big Bang Theory / Harem Scarem


彼らの新作である『Weight Of The World』を聴き込んでいる毎日なのですけど(1日3回は聴いてるよ)、その煽りで彼らの旧作も聴いているのです。今回はこれ。Rubberにいたるポップ化の傾向が明確に表面に現れはじめた最初の作品 『Big Bang Theory』。


このアルバムすんげえ好き。というか基本的にRubberも含めて嫌いなアルバムは無いんだけどね。日本ではHarem Scarem名義最後の作品となるはずだったRubber(アヒルのヤツ)も最初は退屈に思えたけどよく聴いたら結構好きになっちゃったし。っていうかアヒルのアルバムは海外ではRubberのデビュー作って事になってるんだよね。日本だけはHarem Scaremの『Rubber』っていうアルバムって事になってる。ややこしい事すんなよな。


そんな話は置いておいて。


このアルバムは俺的にはもう完全にRubberを聴く感触と変わらないんだよね。だけど、ハードロッカーの間でもRubberほど評判が悪くないのが少し不思議。充分Rubberじゃん、これ。んでさ。元々技巧派集団って言われてた彼らだけど、そう言われていた初期の頃の作品からあんまりギスギスしたモノは感じないのは俺だけかしら。Rubber名義のアルバムもMood Swingsも、もちろん最新作のWeight Of The Worldも全部何処か軟らかい印象なのよね。


なんでだろーってずっと思ってたんだけど、最近買った彼らのライブ盤に70年代から活動を続けるイギリスのポップバンドのSqueezeのカヴァーが入ってたり(俺はSqueezeが元々大好きなのです)、日本盤のCDについているメンバー自身のコメントにも『この曲は昔のSqueezeみたいな・・・』っていうコメントがあったりして、元々彼らはイギリスのポップからも影響を受けてるんだって事実を知ってハードロック然としたスタイルのアルバムにおいても何処かポップ的なオーラが出てる感じがしていた事を妙に納得できたという。


俺がHarem Scaremを好きな理由はその根底に流れるポップテイストによるものなんだなって明確に思いましたよ。だからこそ彼らのスタイルがコロコロ変わっても全然気にならないんだろうな。もちろん以前書いたように出会ったタイミングもあるだろうけどね。やっぱ良いバンドだよ、彼ら。最高。ハードロックバンドと言われるバンド群の中で、いつのまにか俺的ランキングで相当上位に食い込むバンドになってしまったよ。


イナフズナフに大接近中。危うしズナフ!


★2002/03/19 (Tue)
jake
Illegal Soul / Doom


これ知ってるやついるのか?


知る人ぞ知る日本のインテリジェンス・プログレッシヴ・スラッシュ・メタル・ハードコア・バンドであるDoomの92年発表の最終作です。あ、ジャンル名は今考えました。


フレットレスベースをウネウネと自在に操る諸田コウ氏が脱退した事により活動が休止していたDoomですが諸田氏が亡くなってしまった上に、最近ではこのアルバムでドラムを叩いている元GASTUNKのPAZZ氏がGASTUNKの再結成に参加したためにほぼ解散と言ってもいいでしょうね。残念なことです。ヴォーカル・ギターを担当していた藤田タカシ氏はTHE MAD CAPSULE MARKET'Sのアルバムやツアーに参加してたのは知ってるんだけど、その後は何をしてるのか知りません。


あとドラマーは元々GASTUNKのPAZZではなくHIROKAWA(漢字がわからん)という人でした。彼もすげえ巧いドラマーでしたが途中で脱退し自身のバンドを結成して活動してましたがその後の消息は知りません。なんていうバンド名だったかも覚えてないなあ。あんまり評判が良くなかったみたいだけど。


んで、彼らはメジャーから数枚のアルバムを出した後にメジャー契約が終了しインディーズからこのアルバムを発表しました。俺が高校生の時です。彼らがどんな音楽をやっているかというと・・・・一言じゃ言えないんですよね。自主制作で発表したEPとLPが比較的ストレートでメタル的だったので(それでも凄くテクニカルでしたけどね)その頃はスラッシュメタルとして語られる事が多かった彼らですが、メジャーデビューしてからの音は非常にプログレ的な要素を含む複雑な音を出していました。


で、その自主制作アルバムを発表したころにヨーロッパのラジオで彼らの曲がかかったんだか、ライブをやったんだか忘れたけど、とにかくヨーロッパで彼らの音が流れる機会があったようで、その時に一部で結構評判になってレコードショップに問い合わせがあったなんていう話もあります。


初期の頃にSkull Thrash Zone Vol.1という日本のスラッシュバンドを集めたコンピレーションに参加してるのだけど実際それに提供した曲もスラッシュという表現には無理があったし、メジャーデビュー作では相当複雑な楽曲が大半を占めていましたし。ヴォーカルのスタイルはダミ声を基本としたスタイルでハッキリ言って巧くないです(俺はすげえ好きだよ)。だけど演奏は一級品です。変拍子なんか当たり前のドラムに、諸田氏の聴いただけだとどうやって弾いてるのかわからない程のウネルベースが乗り、さらに藤田氏の時にロックンロールを思わせるようなリフあり、スラッシュのように刻むリフもありという自由なギターが被さります。


70年代King Crimsonのダークな部分や不気味な部分から大きな影響を受けたであろう曲構成やフレーズも数多く聴かれます。メタル的な部分を強調したりハードコア的だったり、さらにはジャズっぽかったり。ちなみに歌詞全編英語ですが日本のバンドに有りがちな『同じ言葉を連呼』するスタイルも多く聴かれますね。


要するに歌詞に関してはかなり手抜きで本人たちもあまり重視していないんでしょうね。OUTRAGEなんかも全く同じ歌詞を2回繰り返したりとかしてたし、日本のこっち系のバンドの歌詞は手抜きが多いですね。だけどOUTRAGEなどのようなキャッチーさはあまり無く、とにかく独自の道を行くのがこのDoomです。少なくとも当時の日本に似たタイプのバンドはまったくいなかったと思います。


ようやくこのアルバムの話になるんですけど、インディーズからのリリースとはいっても音質は結構良くて、楽曲も素晴らしいんですよ。これが最後になってしまったのが非常に惜しまれます。急激な曲展開をしつつも勢いを保った曲もあり、長めの大曲もあり、最後まで非常に緊張感の溢れるスリリングなアルバムになっています。


特に一曲目の『I'm Real』はヤバイ。まじカッコイイ。ヤバイってこれ。ギターは結構ロケンローなフレーズが飛び出したりしつつ彼らの曲にしては割とキャッチーで即効性も高いです。だけどメチャメチャ複雑。5分の中にギッシリ色んなモノが詰め込んであります。このアルバムは彼らの作品の中でもかなり複雑な方に入りますね。


で、4曲目の『水葬』って曲はインストなんだけど、このアルバムの発表当時雑誌のインタビューで『Doomがボンジョビをやったって感じの曲かな』とか言ってた気がするんだけど、何処がじゃーボケー!


で。このアルバムは久しぶりに聴いたのだけどもね。俺は彼らのメジャーからのアルバムの中の特に好きなアルバムは『Incompetent ...』というアルバムなのですけど、このアルバムもそれに引けを取らない出来だなって思いました。すげえよ、この緊張感は。邦楽だとか洋楽だとかそういうのは全然無関係で『凄いロックバンド』だから聴いてご覧って色んな『音楽好き』に薦めたいアルバムです。けどこれってまだ売ってるのかな。西新宿とか行けば中古で転がってるかもしれないけど、今から入手するのはなかなか難しそうだなあ。とりあえず地元の小さなCDショップなんかには絶対ないのであしからず。


だけどこれはホントにもっと色んな人に聴いて欲しいアルバムだな。


あと彼らの初期の自主制作アルバムNo More Painは後にEPとLPが両方カップリングにしてCD化されました。それもまあ89年にCD化されたモノだから入手は難しいかもしれないけど、一番ストレートな作品なので結構聴きやすいと思うし見つけたらそれから聴いてみるのも良いかも。けど音がスゲエ悪いので声を大にして薦めるのはちょっとためらいがあるんだけども。入手が難しいといいつつも極最近LPが売ってるのを池袋のディスク・ユニオンでみたな、そういえば。意外と簡単に見つかるかも。わかんねけど。



ちなみに先ほど出てきたSkull Thrash Zone Vol.1ですが、各バンド2曲づつの参加で6バンド12曲入りです。あのエックスも参加してます。けどエックスの何処がスラッシュなんだっつうの。エックスが提供した曲は歌詞は全部英語で、曲の雰囲気は既にすっかりエックスです。エックスのこの時のメンバーは写真には三人しか写ってないけどYOSHIKI、TOSHI、PATA、TAIJIの4名みたい。HIDEはまだ参加して無いんですね。で、このSkull Thrash Zone Vol.1は非常に面白いので中古で見つけたら是非聴いて下さい。数百円で売ってるのをよくみるし。Doomが提供した2曲はホンキでカッコイイし。


Doom以外での聴き所は女性ヴォーカリストHIZUMI率いるJurassic Jadeっすよ。これは必聴です。何回聴いても笑えるんですけど。『KAGAMI YO KAGAMI』って曲はマジ聴いて欲しいです。『ガキども!いくぞ〜!』との掛け声から始まり、イキナリ失笑しつつ『鏡よ!鏡! この世の終わりを 映せ! 映せ! 映せ!』って歌詞でイスから転げ落ちます。なんだそれ。歌もすげえです。俺にメタル女性ヴォーカルアレルギーを植え付けたのはこの人かもしれないです。つうかヒズミて。


では彼らの写真をどうぞ。






真ん中の白い赤と黒の衣装を着た白塗りさんがHIZUMIさんです。わーお。ついでにこの当時のDoomメンバーとエックスメンバーもどうぞ。





Doomです。左の白塗りパンダさんが諸田氏。真ん中が藤田氏で右がHIROKAWA氏。藤田氏は後に凄く太って顔が全然違っちゃってます。ええ。このときはこんなにスマートだったのに。





当時のエックス。多分1番右はTAIJIかしら。PATAじゃないよね?PATAは写真にはいないと思われます。あとの二人はまあ見ればわかるわね。


では最後に興味がある人のためにSkull Thrash Zone Vol.1のジャケットを紹介してオシマイにします。つうか興味があるヤツなんかいないっていうな。しっかしこんなのがメジャーレーベルから出てたという事が驚きだよな。


あ、でね。このCDは多分91年にCD化されたもので元々は87年になんらかのフォーマットで1回出てるっぽいんだよね。だって91年っていったらエックスが既にメジャーデビューしてるし、計算があわないのよ。ちょっとネットで調べたら87年が最初のリリースみたい。その辺の前後関係がイマイチ不明なんだけど、とにかくエックスがメジャーデビュー前のモノであるのは間違い無いです。あとJurassic jadeって少なくとも2001年までは活動してたみたい。っていうかまだ存続してるっぽいぞ。マジかよ!






因みに。



Skull Thrash Zone Vol.2は発売されませんでした。
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