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音楽日記 2002/05


★2002/05/01 (Wed)
Are You Experienced / The Jimi Hendrix Experience


ジミさんの記念すべきデビューアルバムです。超名盤。まじ。まじまじ。


ジミさんの作品は基本的にかなり曖昧な内容になってて、国によって収録曲が違ったり、曲順が違ったりしてかなり長いこと決まった形がハッキリしない、いい加減な状態で出回ってたんですよね。オリジナルアルバムですらそんな状況で。


ジャケットも国や再販された時期によって色々あるし、生前にスタジオ盤は3枚しか出していないにも関わらず、凄く複雑なリリース状況になってしまって初心者泣かせのアーティストになっちゃってるんですよね。


だけど97年に家族の元に権利が戻ってからは、しっかりとしたデジタル・リマスターを施し、オリジナルアルバムの一応の『定型』というのが決まって改めて再リリースされたんです。俺が持っているこのバージョンがそれです。収録曲は17曲で、後半には当時シングルでのみ発売された名曲達が追加収録されています。今の段階でこれを一応のオリジナルアルバムの『最終形態』として認識して良いんじゃないかな。


けど未だに輸入盤ではジャケットが違うヤツとか、11曲しか入ってないアナログ時代と同じ曲数のヤツなんかが売ってるけどアレは一体どーいうことなんだろ。


で、肝心の内容だけども。後半部分にはジミさんを語る上では絶対に外せないシングル曲が畳みかけてくるし、前半は前半でライブでもおなじみの曲が並ぶしで、ある意味ベストアルバムとも言えるモノですよ、これは。サイケな曲もチョボチョボ出てきます。恐らくジミさんの作品では一番サイケ色が強いですね。後期に行くと徐々にファンキーな曲が幅をきかせ始める感じで。


でもいつでもジミさんはブルースを貴重にした曲が得意で、そういう曲は常に演奏し続けています。ブルースを貴重にした曲は一聴すると地味だけど実に深くて濃いです。なので聴きこむと最初はダルかったその手の曲が逆に『無くてはならない曲』に変わっていきました、俺の場合はね。ブルースな曲はこの作品内では『Red House』が有名だね。


一曲目の『Foxy Lady』も何処からどう聴いてもジミさん以外の何者でもないという名曲だし、続く『Manic Depression』もカッコイイ。この曲は後にKing'sXにもカバーされててそっちもカッコイイぞ!レッチリのカヴァーが有名な『Fire』なんかも外せないよなー。ライブではすげえハイテンポで演奏する事の多いこの曲。そんなノリ重視のライブバージョンも良いけどグルーブ重視なスタジオバージョンもスキですね。ライブの超ハイテンポバージョンに慣れちゃうとやたら遅く感じるのは確かなんだけど、俺はどっちもスキだな。


後半のシングルを集めた部分はですね。


12.『HeyJoe』
13.『Stone Free』
14.『Purplr Haze』 ← Wingerのカヴァーがダサすぎたあの曲です。
15.『51st Anniversary』
16.『The Wind Cries Mary』 ← ボンジョヴィのリッチーがやってたよね。
17.『Highway Chile』


・・・と。シャレになってないラインナップ。ヤバイよこれは。こんなの凄いに決まってるんです。前回の音楽日記をアップした後から今日まで殆どこのアルバムしか聴いてないです。何度聴いても飽きないしダレない。聴けばきくほどはまっていく。そんな作品。初心者もこのアルバムから入るのが良いと思うよ。曲もコンパクトなモノしか入ってないから聴きやすいし。


この作品を聴いて驚かされるのは、最初から完全にジミさんの世界が出来上がってる事。デビューしてからたった4年弱でこの世を去ってしまったのに今でも支持者がいるというのにも頷けるよ。これだけの個性を持った人ってそう滅多にいないもん。ジミさんの好き嫌いのわかれるであろう歌も好きになればジミさんが歌ってないとダメだ!と思えるしね。それだけ濃いんだよな、ジミさんの歌って。ヘタクソなんだけど。


この作品以外ではジミさんじゃない人が歌ってる曲が入ってる作品もあるんだけど、やっぱダメなんだよ。ジミさんじゃないとダメなの。ヘタクソなのにジミさんの『濃さ』がないとダメなの。そういう曲でももちろんギターはジミさんが弾いてるんだけど、歌もジミさんじゃないとダメなのよ。


あとドラムのミッチ・ミッチェルのスタイルは確実に好みがわかれるね。無駄に手数が多いのよ、ミッチのドラムって。『叩ける隙間があったらとにかく叩く』、みたいな落ち着きの無いバタバタしたドラムスタイルが鬱陶しい人は鬱陶しいと思う。俺は好きなんだけど、絶対嫌いな人もいるよ、これ。


そういう人はBand Of Gypsysのライブ盤を聴いてみるのも良いかもね。そっちはもっと落ち着いたドラムスタイルの人が叩いてるし、ミッチのような危うさがないタイトな演奏が聴けます。俺としてはミッチの危うさがまた良いと思うんだけどね。


この作品に限らず、ジミさんの作品は全てクセは強いし、全てにおいて『濃い』から好みはわかれるけど『唯一無二』って正にこのことだよ。ロックファンだったらこのアルバムは一度くらいは聴いて欲しいと思います。


けど、やっぱ新しい音楽しか聴かない人にはこの音の古さはキツイんだろーな。歌が左から、ドラムが右から・・・という風に分離した聴こえ方をするのはこの時代の音源の特徴だけど、それに馴染めない人は馴染めなさそうだし。だけどそれはそれで馴染むと気持ちがいいんだよ。ホントに。


はじめてジミさんを聴いたのは多分高校生の時。もう10年前だよ。けどその時は俺も音の古さと余りにも強い個性に全然馴染めなかったんだけどね。だけど1回はまると抜け出せないんだなーこれが。


とりあえずジミさんは大音量で聴のが吉。


★2002/05/09 (Thu)
Talk Show / Talk Show


この音楽日記の文字が書いてある部分のテーブルの幅ってトップに書いてるデイズと同じ450ピクセルなんだけど、枠線が文字ギリギリに引いてあるとやたら狭く見えるね。文字の部分は同じ幅なのに目の錯覚で狭く見える。不思議ー。


そんなこんなで一週間以上ぶりぶり。


今日は、これ、Talk Show唯一の作品。これはStone Temple Pilots(以下STP)の別プロジェクトで、本家と違うのはヴォーカルだけです。本家ヴォーカルのスコットが麻薬でとっつかまってる間に元Ten inch menのデイブ・クッツを迎えて製作したアルバム。


STPのサード以降のスコットのヴォーカルスタイルは明らかに最初の2作品と違うのだけど、この作品に参加しているデイブのヴォーカルスタイルはそのサード以降のスコットの歌いっぷりとかなり近い雰囲気を持ってるので全然違和感が無いです。俺の中では立派なSTPのアルバムってことになってる。


作風は凄くポップでUKっぽい雰囲気も感じるモノとなっています。70年代のグラムロックバンドであるT-REXなんかに通じる色気のあるポップさ、とでも言えば良いかな。なんとなく何処かセクシーな感じと言うか。それで確かにポップなんだけど、一曲目のイントロが始まった瞬間からこれは間違い無くSTPのメンツが演奏している曲だ、というのがわかるんですよね。


STPはファーストではグランジの最後っ屁という雰囲気の音を披露してたけどそれでも他のバンドとは違うポップ感というものがあるバンドでした。さらにセカンド以降はどんどんポップ化が進み、サードなんかメチャメチャポップです。全然グランジじゃない。そんなことからわかるようにSTPってのは元々ポップなテイストが好きな連中が集まったバンドなんですよ。自然な流れでポップ化して行っているの。


サードの後に出たのがこのTalk Show。そのポップ化の流れの中で作られたアルバムなので、この作品だけ突然ポップで全然違うことをやってるわけじゃないんですね。前述したように演奏は間違い無くSTPのセンスと同一のモノだし。んで、相変わらずそのメロディーセンスが素晴らしいんです。STPのファーストから純粋にキャッチーで良い曲を書いていた彼らだけど、ここでもそれは全く同じ。


STPは本当に優れたメロディーメイカーバンドです。このTalk Showでもそのセンスは存分に楽しめる。スコットとデイブは同じようなタイプではあるけど、やっぱりスコットの声の方がすきなんだよね、俺は。デイブも全然悪くないんだけども、でもやっぱスコットの方が好き。この作品をスコットに歌わせて、STP名義にしちゃって改めて出してくれたらすげえ嬉しいなあ。ありえないけどさ。


とにかくメロディーの良さは保障します。ええ。


★2002/05/17 (Fri)
When I Was Cruel / Elvis Costello


コステロの新作でっす。ウイザーの新譜と迷ってこっちを買ったんだけど、見事に騙されました。というのも帯に書いてある『ロックテイスト溢れるラウドなロックアルバムに仕上がっている』という言葉にスゴイ先入観を抱いて聴いたからなんですよね。


この作品は『今回はロックンロールなバンドサウンド炸裂!』とかいう感じで紹介されてたのよ。そういうコト言われると初期のような感じなのかって思うじゃん。けど全然違うの。事前に想像してた音と違うとクオリティーが高いか低いかとは別の次元でガッカリするじゃん。今回はまさにソレで。違うなら違うでいいんだけどさー。だったら帯にウソを書くなよ、ホント。もうっ。


で、既に10回くらい聴いたんですが、確かにバンドサウント炸裂な初期っぽい曲もあるにはあります、2,3曲しかないけど。それらの曲は初期の頃のような弾けるポップ感はあんまりなくてやや落ち着いた感じかな。正直言うとまだまだ良いか悪いかは判断出来てないんだけど、初期の方が好きなのは確か。


この作品は全体としてやたらバラエティーに富んでるのよね。それにまだ慣れてないのです。ホントに色々なタイプの曲があるの。こういう作品って聴き込まないと戸惑いが取れなくてハッキリ判断出来ないんだよ。だけど、随所に聴かれるクセのあるメロディーは魅力的と言えば魅力的ですね。どんなタイプの曲にも充分コステロワールドが存在してる。それはやっぱスゴイと思うよ。


コステロはメロディーにもクセがあるけどヴォーカリストとしても凄くクセの強い人で、好きじゃない人はもうホントに徹底的にダメだよ多分。それは初期の頃から同じだけどね。ホントにクセがあるよこの人の歌い方。基本はEnuff'znuffのドニーのようなジョン・レノン系の声なんだけど、コステロの場合は語尾を『ウェっ』ってやるような歌いまわしをするんで、さらにクセが強い。


あと、歌い上げたりすると本当にミスチルの桜井さんと声が似てるねー。近年の作品では特に似てる。この作品の3曲目に収録されている『Tear Off Your Own Head』なんかモロにミスチル。もちろん逆だけど。パクリとかじゃなく凄まじく影響されてるって意味でね。


コステロを聴いてるとミスチルも聴きたくなるんだよな。


そーいえば最近ミスチルもアルバムだしたよね。


ちょっと聴きたくなってきた。


★2002/05/17 (2) (Fri)
The Invisible Band / Travis


UKのTravisのサードです。


これメチャメチャ良いネ。これを読んで『前と言ってること違うじゃねーか』って思ってる人が3人くらいいると思うんですが。確かに発売直後に買ってずっとシックリ来なかったのは確か。だけどついにきたのよ。ガッツンガッツンきた。最近超聴いてます。その煽りでセカンドも聴きはじめたよ。


最近はお金がなくてCDをあまり買ってないので以前に買ってあまり聴かなかったモノを引っ張り出してきてひたすら流してるような事が増えたんだけど、これもそんなコトをやってる内にハマって来たモノのひとつです。


最初にこのバンドの音を聴いた時にシックリこなかった原因のひとつはまずドラム。すごく控えめな音が気持ちよくなくてね。さらにはヴォーカルの控えめな歌い方も聴いていてもどかしくて。だけど聴き込んでたら慣れちゃった。というかむしろその控えめな感じが気持ちよくなったのよね。


メロディーもじっくり聴くと素晴らしく良いというコトに気づかされたよ。3曲目の『Side』は一聴した時からメロディーがハキハキしててすぐ気に入ったんだけど、他の曲は前述したように全てにおいて控えめなテイストが原因でピンと来なかったんだけど、いやはや他の曲も実は素晴らしいのね。一曲も嫌いな曲無いよこれ。後半のボーナストラックも含めてね。


14『You Don't Know What I'm Like』はやたらビートルズみたい。俺はすぐ何かにつけてビートルズを引き合いに出すなんてコトをチョッパーさんとかいう人に言われたからそれ以来悔しくて音楽日記やレビューを書くときに意識してビートルズの名前をなるべく出さないようにしてるのだけど、今回は出してやるぞコノヤロウ。


その14曲目はギターのAndyが書いてる曲。1曲だけ様子が違うから最初カヴァー曲かと思ったよ。歌ってるのも彼? Franじゃないよね?


とにかくすげー良いです。Radioheadのフォロワーとか文句いう前にメロディーが素晴らしいんだから仕方ないだろーがコノヤロウ。Radioheadっぽいというよりもビートルズっぽいバンドですよ、この人達は。実際ビートルズやジョン・レノンのカヴァーもかなりやってて直接的に影響を受けてるしね。


うーん。聴きこんで良かった★


★2002/05/19 (Sun)
十七歳の地図 / 尾崎豊


実は大好きなのに今まであんまり話題に出した事がなかった尾崎。これが彼のデビューアルバムです。このアルバムは最初の頃はヘンテコな薄っぺらい特殊なケースに入ってました。現在売られているものは普通のケースに変わってるみたいだけど。


俺が持ってるのはその薄っぺらいヘンテコなケースの方です。入れ物が真ん中からポキって折れる変な作りなんですよね。このケースのモノは中古でプレミアがついているのを見かけた事があります。俺はこのケース大嫌いっす。出し入れするだけでCDにキズつくんだよね。むしろ普通のに代えて欲しいよ。


いきなり話がそれたけど、とにかく尾崎の作品はこのデビュー作以外もすべて大好きです。大好きではあるんだけど俺自身は彼をカリスマ視したことはないんですよね。今でも熱狂的なファンがいるのは知ってるけど、俺自身はそういう部類には入らないと思います。でも好きではあるからそれなりに熱く語れます。


尾崎に出会ったのは中学生の時で、彼が歌う歌詞に共感するには丁度良い年頃。だけど当時から彼をカリスマ視するような盲目的なファンではありませんでした。『こんなこと真顔で出来るってすげえ勇気あるなあ』とか『だけどメロディーは好きだなあ』とか『なんか知らないけど一生懸命だなあ』とか、そんな風に聴いてました。


尾崎って音楽的な才能に恵まれている人だとはあんまり思わないです。むしろ、とてもとても不器用なアーティストだと思います。だけど逆に、だからこそこれほどまでに熱狂的なファンを作り出したのだと思います。間違い無くその不器用さが尾崎の魅力であり、カリスマ視される大きな理由のひとつであると思うのです。さっきも書いたけど俺自身は盲目的にはならなかったけど。


尾崎はライブでは本当にカッコよくないです。余りにも世界に入りすぎてしまい、全く観客の目を忘れてとにかく全力で歌う。もちろん丁寧に歌う場面もあるけど、基本的には絞りだすように叫ぶ姿の方が印象に残るし、歌自体もうわずりまくりだし、MCも恥かしいし、パフォーマンスも無様という表現がピッタリくる程にのた打ち回るし。照明の骨組みから飛び降りて骨折した、なんて事件もあったよね。


そんな尾崎の最初の一歩がこの作品。声はとても若くて荒々しいです。歌詞も全然完成されてないし、言葉を強引にメロディーに乗せて無理があると思える部分も沢山あります。表現はあまりにもストレートで、ハッキリ言っちゃえばかなり素人くさい。尾崎の書く歌詞は1回聴けば何を言いたいのかすぐわかる。分かり易過ぎるんです。


この作品に収められている『はじまりさえ歌えない』、『ハイスクールRock 'n' Roll』、『15の夜』、『十七歳の地図』、『愛の消えた街』なんかは正直聴いていて恥ずかしくなるほど真っ直ぐです。気持ちだけで、勢いだけで書かれたであろう歌詞とメロディーを耳にして『よくもまあこんなモンを人前で披露できるよなあ』と思ってしまうほどです。


多分この人が自分の身近な友達としていたら、それこそ『痛いヤツ』の一言で済まされていただろうと思うよ。『これから半日は退屈な授業で費やすだけで』とか『金も取れない学生に一体何が出来るのか』とか『君のためなら死ねるさきっと、愛こそすべてだと俺は信じてる』なんてホンキで歌い上げてしまうこの恐ろしい感覚。


尾崎の歌詞って『詩』っていうよりも単なる『文章』になってるようなモノも数多くあるからそれがまた妙にダサくて素人っぽいんだよね。歌も全部一発録りなんじゃねーかと思えるほど勢いだけで歌ってるし。実際レコーディングの時もマイクの前で凄く体を動かしまくりながら自分の世界に入り込みながら歌ってたらしいし。


先ほど具体的に曲名を挙げた5曲なんかは、尾崎じゃなくても書けるような歌詞とメロディーだと思う。このくらいのレベルのモノだったらやってたヤツは他にも沢山いたと思います。それほど素人くさいんです。尾崎の場合はそれを表現する時の必死具合、一生懸命さ具合、入り込み具合が半端でなかったというだけで、作詞や作曲のレベルはそんなに高いとは思わないです。


だけど不器用故のその素人くささと一生懸命さが当時の中高生の心の琴線に触れたわけで。まるでその辺にいる高校生が自分の代わりに歌ってくれているかのような感覚というか。普通は恥かしくて出来ないストレート過ぎる感情をここまで徹底して熱く恥かしげもなくやってのける尾崎をカリスマ視する一方で、確かにそこには親近感も感じていたという微妙な感覚。


で、このデビュー作以降に尾崎の歌詞やメロディーがどんどんプロフェッショナルなモノになっていったかというとそうでもない。後期の作品でもずっとその素人くささは残ったままでした。声はさすがにデビュー作の頃のような若い感じではなくなっていったけど、それでもうわずりまくったり勢いだけで歌ってる感じはそのままでした。歌詞をメロディーに強引に乗せるのも同じ。ストレートさも同じ。


自分のことをメインに歌う尾崎のようなアーティストの場合はアルバム3枚くらいで全て歌い尽くしてしまうから、その後の作品はもっと世界を広げて違うところから題材を持ってこないといけなくなる、なんてコトを言ってる音楽評論家がいたんだけど、確かにそれは言えてると思います。


尾崎も3rdの『壊れた扉から』までは統一した歌詞世界だったのが4thの『街路樹』からはちょっと雰囲気が変わり始めているからね。だけど自分自身の気持ちをストレートに歌うことしか出来ない彼は『街路樹』以降は必死に足掻いていたのだと思います。3rdまでは『不器用な青少年の足掻き』であった尾崎世界が『不器用なアーティストの足掻き』に変わっていったという。


なので『街路樹』で雰囲気が変わり始めたとはいえ最初から最後まで尾崎の本質は結局同じで『不器用な人が必死に足掻いている』というモノであったと思います。そんな不器用な尾崎ですが、何かが噛み合ってやたら完成度の高いモノを生み出した瞬間もあるわけで。それが尾崎を断片的にしか聴かない人でも知っているような有名な曲たちです。


このファーストアルバムでは『I love you』や『僕が僕であるために』、『Oh My Little girl』あたりですよね。他では『ダンスホール』とか『シェリー』とか『太陽の破片』とかかな。その辺の曲は素人くささってのが薄くて、凄く洗練されています。歌唱もかなり丁寧だったりするし。


だけどその洗練された楽曲だけだったら多分ここまでカリスマ視されることにはならなかったと思う。前述したように『気持ちだけで作って勢いだけで歌っている』という曲の存在があったからこそここまで支持を得たんでしょう。


3rd『壊れた扉から』収録の『Freeze moon』なんか気持ちと勢いだけで書かれたモノの代表的な曲でしょう。歌詞を先に書いてあとからメロに乗せて作っているからこういう曲が出来るんだろーなあ。しかもさ。


俺たちはタバコをふかし


最後の一本を吸い終えると


帰る金にさえ足りなくなっちまう



って。日本語として微妙にオカシイし。だけどそれをそのままやってのけているのがスゴイ。言いたい事は凄く伝わってくるし意味は判るけど言葉として変なんですよね。だけどその『気持ちだけ』でねじ伏せるその勢い。やっぱりそれがこの人の魅力なんだなあ。尾崎の周囲のスタッフ達もその辺の未完成な部分をあえていじらずにそのままやらせていたのが良かったんだろうな。


だけどもっと言えば、その『気持ちだけ』でやってる曲だけでもダメなのよね。この勢いでやってる『足掻きの部分』の要素と、『I Love You』などで聴かれる何かが噛み合った瞬間の『洗練された部分』が両方あるからこそ尾崎は青少年のカリスマになり得たと思います。


この人のライブ映像を見たり、音楽を聴くと、必死に足掻けば足掻くほど見苦しい、だけどそれ故に人の心を打つ、そしてその結果何かが噛み合う瞬間もある、というのを凄く感じますね。この不器用なカリスマの音楽は彼をカリスマ視するかどうかは別として、音楽そのものはいつの時代も色褪せないと思います。


だけど中高生までに彼の音楽に出会わないとなかなか素直に楽しめないのも事実だと思うよ。俺も中学生の時に出会ったから今でも聴けるわけで、多分今になってはじめて尾崎のアルバムを手に取っていたら聴いてられなかったと思います。中高生の時に尾崎に出会い損ねると彼の世界に入るのはなかなか難しいだろうね。


現在中高生の諸君。尾崎の有名な曲以外を聴くなら今がその時期だぞ。って言っても今時の中高生は既にこんな青臭いメッセージを気に止めないかもしれないけど。


とにかく俺は不器用な尾崎の未完成な音楽が大好きなのです。


★2002/05/31 (Fri)
Holy Wood / Marilyn Manson


姪のマホにこのアルバムのジャケを見せたら超ビビってた。


それはともかくメチャメチャ良いね、これ。発売直後に買ってソコソコ聴いてたんだけど、聴き込んだぜ!って言えるほどまでは聴いてなかったのよ。けど少し前に再び聴きはじめて今現在は超ヘヴィー・ローテーションで聴いてます。


この作品はコンセプト三部作の最初の章に当る作品で、ストーリー的には『Holy Wood』、『Mechanical Animals』、『Antichrist Svperstar』っていうリリースとは逆の流れになってるらしいです。と言いつつ俺としてはそういうのはどうでも良かったりするんだけど。


三部作の印象をざっと書くとですね。『Antichrist Svperstar』はキライじゃないけどそれほど大好きってわけでもないのよね。んで、次の『Mechanical Animals』はキャッチーさが前面に出ててかなり好きって感じだったんだけど、この作品は他と比べてもダントツで好きですね。


『Mechanical Animals』も相当良かったけどこっち方がマンソンの魅力を最大限に活かした作品に仕上がっていると思います。『Antichrist Svperstar』に関してはさっきも書いたようにキライでは無いけど、どうもメロディーが弱い気がしてそんなにはまれなかったんだよね。


とにかくマンソンの魅力はメロディーです。マンソンってこんなヴィジュアルだからちゃんと聴いた事が無い人の中にはゲテモノだと誤解してる人もいるかもしれないけど、実はとてもメロディーを大事にする人だと思います。


確かにスゴイ声で歌ってる曲も多いし、そもそも綺麗な声じゃないけど、マンソンの歌はとてもエモーショナルなのよ。しかも暗くて重い雰囲気の中に光るメロディーが沢山あるのです。全然とっつき難い音楽じゃない。充分キャッチーだと思う。


それにこの人がやってることはアレンジの面では現代的なデジタルっぽい味付けがしてあるけど、根底にあるのはキャッチーなハードロックだからね。それを彼の強烈なキャラクターと彼なりのエッセンスを加えてやってるに過ぎないわけで、個人的には聴き手を突き放すような雰囲気はあんまり感じないんだよね。


三部作の中では一番歌が大事にされてるのがこの作品を最も気に入っている理由だね。単純にノリの良い『The Fight Song』や『Disposable Teens』なんかも最高にカッコ良いし、一聴するとドンヨリ暗いような印象受ける曲でもメロディーは本当にキャッチーで素晴らしい出来です。


ヴィジュアル的なモノだけだったらお金さえかければ誰だってそれなりに演出できるだろうけど、彼の場合はそれだけじゃない。強烈なキャタクター性に加えてこれだけ優れたメロディーを書けて、ヴォーカリストとしてもとても魅力的な歌を披露しているんだから文句なんて言えないよ、ホント。


このHoly Woodは現時点でのマンソン最高傑作ですよ。
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