 |
Live At The Marquee 1969 / King Crimson |
|

これはDGMコレクターズ・クラブ会員のにみ頒布されたオフィシャルブート。このシリーズは日本オンリーで店頭販売用としてリリースされています。ただし一枚ずつではなく3枚くらいをひとつにまとめたボックスセットとしてのリリース。これはそのシリーズのVol.1に入っていたモノの中の一枚です。
これは60年代のライブ音源というだけで貴重なモノであるのは確か。それだけで価値があるのかもしれないです。けど60年代のライブ音源で60年代のモノとしてはそれなりに良い音のモノが既に『エピタフ』というアルバムとしてリリースされているので60年代のライブが聴いてみたい!って人はまずはそっちをどうぞ(ただしエピタフは全部良い音ってわけではなく音質にはバラつきがありますので注意ね)。
とりあえずこのアルバムは音がスゴイ。とにかくスゴイ。このライブ盤の音質は近年稀にみるほどの低音質なのです。すごいよこれマジで。ブートとしてもかなり酷い方に入るんじゃないかな。だから60年代のライブを聴いたことが無いからってこれを買うと泣くと思います。いくらオフィシャルブートっつっても限度はあるだろって感じの低音質ですから。Crimsonはこういう発掘系の音源をオフィシャルからリリースするコトが多いアーティストだとは思うけど、その中でもダントツの音の悪さ。
その音質がどれくらい酷いかって言うとですね。
例えば。バンドをやっている人なら絶対やることだと思うんだけどスタジオで練習してて自分たちの演奏の出来を確認するためにテープに録音したりするじゃん。で、そのスタジオの設備が最悪だったとする。アンプとかマイクとかがボロボロでスタジオ内の音響も酷いとかそーいうのね。そのボロい設備での演奏を天井に設置されているボロいマイクで拾って録音したとするわけ。
で、聴いてみたら録音レベルをいじるのを忘れてて最大で録音しちゃってたことに気づいたと。音は凄まじく割れ割れ。しかも設備がボロい関係でなんか遠くの方で演奏してるみたいに聴こえる。ドラムの音なんかはハタハタっていう感じでライン録りとは明らかに違うショボい生音風をもっと酷くした感じ。このライブ盤はそんな音です。
04に収録されてる『Travel Weary Capricorn』とか途中で何がなんだかわからなくなったりするときがあるし。01の『21st
Century Schizoid Man』も始まった瞬間に既に雑音状態だし。もう演奏の出来が良いのか悪いのかすらわからなくなるレベルで音が悪いのですよ。俺が持っている数々のロックのライブ盤の中でダントツでトップを独走する低音質。
けど03『I Talk To The Wind』は元々激しい曲じゃないので割と聴けます。音割れの度合いがマシなのよね。歌も綺麗にハモってるのがよく確認できるし演奏の出来は悪くないってのが伝わってくる。浮遊感のあるアルバムバージョンと比べて、こちらはハキハキとした雰囲気の演奏になっててこれはこれで嫌いじゃないです。とはいってもあくまでもこの中では音がマシってだけの話で劣悪であることにはかわりが無いですけど。05のインプロ曲は酷い音質ではあるけどなかなか面白いインプロになっててまともな音で聴いてみたかったと思わせてくれますね。
そんな風に、既に主要なライブ盤を持っててその上で聴くならなんとか聴き所を発見できなくは無いけど、普通の人は絶対買わないでいいモノですよこれは。この低音質のアルバムから聴き所を探し出せる人はもう充分マニアっす。
けど、あえて聴くのも面白いかもしれないとも思う。いや、これを聴けば音質的な部分で大概のモンは聴けるようになると思うから。Crimsonのようなキャリアが長くてマニアが多いバンドってのはこういうオフィシャルブート的な低音質のライブ盤を結構平然と出したりするんで、『オフィシャルモノにもこんな酷い音質のものがあるんだ!』っていう知識と免疫を作るのには打ってつけなのではないかと思います。
買ったは良いけど音質が良くないからという理由であまり聴いていなかったライブ盤ってのが他にも実は結構あってさ。ジミさんとかCrimson、Todd
Rundgrenなどのように、基本的に古い音源が多くてしかもライブ盤は発掘系の音源殆どなんていうアーティストのアルバムは聴くためっつうより集めるために買ってるみたいな部分もありました。最近のバンドのライブ盤でも少し音が篭ってるのがイヤだとかそーいう感じで買っただけであんまり聴いてないライブ盤ってのがいくつかありました。
けどこの69年マーキーのライブ盤を、音の悪さを我慢して何度か聴いていたらそれらが全部『あれよりずっとマシだ』と思えて全然普通に聴ける体になってしまいました。ある意味このアルバムを聴くことで聴けるモノが広がるというか、音の悪さに寛容になれるのですよ。マジ、Harem
Scaremの日本オンリーリリースのライブ盤とか音が篭っててイマイチとか思ってたけどこのくらいの音質で聴けるのに文句言うなんて贅沢だって思うようになってきたよ。
それとね。このアルバムが入っているボックスセットのシリーズVol.1は3枚セットなんだけどどれもかなり音が悪いの。このシリーズの中でVol.1はズバ抜けて音が悪いわけ。けどこの69年マーキーのライブが余りにもスゴイんで他の2枚を『これなら聴けるな』と思えてしまうのが恐ろしいです。
因みにVol.2の80年代と90年代のライブがセットになってるものなんかは結構音質良いです。全然問題が無いわけじゃないけど一聴して『うわ!!』って悲鳴をあげるような音質では決して無いです。その後のシリーズもそれなりの音質で聴けるものが結構あります。やっぱ低音質のモノも混ざってはいるから油断は禁物ですけど。
このアルバムを聴いて思ったのは、マニアは酷い音質のブートなどを聴き込むことによって普通の人の感覚を忘れてマヒしてゆき、常識的に考えたら完全に的外れな内容の作品をイチオシしたりするようになっていくんだなということです。マニアのサイトではこのアルバムも他の音質が良い作品と同様な感じで取り扱われてるってのが信じられないよ。『音質は悪い』と書いてあってもそれほどその部分にこだわる様子がないんですよね。一言で流しちゃってるの。この音質を一言で流せるってスゴイ感覚だと思うよ実際。
ホントマニア度が濃ければ濃いほどその人のオススメは信用しちゃいけないというのが俺の持論です。音質だけじゃなくマニアックな内容のアルバムをいっぱい聴いてると作風に関しても感覚がずれてくるんだよきっと。
Crimsonのアルバムで太陽と戦慄を一番にオススメにしてる人とか絶対信用できません。確かに太陽と戦慄は名盤だとは思うけどあれは初心者の入り口には絶対にならないアルバムですよ。Redとかもしくは近年のスタジオ盤とかのわかりやすいのを聴いて、ある程度Crimsonを好きになってから聴くアルバムだと思う。けどいるんだよなあ、アレをイチオシしてる人が。太陽と戦慄を普段プログレとか聴かない人にいきなり聴かせたら絶対戸惑うって。
とりあえずこのアルバムを数回リピートで聴くことが出来ればあなたの感覚は少しオカシクなってるに違いありません。それが良いんだか悪いんだかわかんねーけど。 |
|
|