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飲み込む言葉


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言いたい事が沸き出てくる気持ちはわかるし、誰かに伝えたくてしかたがない時があるのもわかる。心を大きく動かされた時や、心を動かされた人々を見ると、自分もそれに対して何かを言いたくなる気持ちもわかる。


言葉ってのは、たとえ同じ台詞でもその言葉を発した人の想いや意図が込められている限りは『その人唯一の言葉』だ。他の誰でもない。他の誰の言葉にもなり得ない。ありきたりな台詞でも、その台詞を言った人の人数分だけの想いや意図がある。


そんな風に言葉はとても大切なもの。


だからこそ独り善がりは良くない。自分の言葉を投げっぱなしにしてしまっては、その言葉が行き場を失ってしまう。大切な言葉が濁ってしまう。他人は自分が思っているほど自分の言葉に興味が無いものだ。10の気持ちを込めた言葉がそのまま相手に10伝わるわけじゃない。10の気持ちを相手に伝えたいと思ったなら、100も200も気持ちを込めなくてはいけない。


でもそれに気づかない人々がいる。


独り善がりに『何かを言いたい』という衝動に身を任せて言葉を発しても何も伝わらない。勿論、感情に任せてとにかく言葉に気持ちを叩きつけることが必要な時もある。友人や家族に、整理出来ていない自分の頭の中をあえてさらけ出すことで、自分自身の気持ちが整理できることもある。


だけど。


言いたい事があっても黙っているべき時もある。自分の『誰かに伝えたい』という衝動をじっとこらえて、とにかく黙っているべき時もある。闇雲に言葉をバラまいてもその言葉は行き場を失うし、それどころか周囲を傷つけることすらある。それを忘れちゃいけない。


言葉は大切なものだ。だから、言葉を発する前に、もう少し周囲を見渡すべきた。自分の衝動だけに身を任せてはいけない。自分に悪意が無くても人を傷つけるかもしれないし、状況を悪化させることになるかも知れない。


言葉は伝えるためだけにあるわけじゃない。自分が飲み込むために存在する言葉もある。自分の中に言葉が溢れてきたとき、必ずしもそれを外に出せばいいわけじゃない。その言葉を外に発するべきで無いと思ったら、その溢れそうな言葉を自分自身が飲み込むべきなんだ。


自分がその言葉を外に出さずに飲み込んでしまうという事は、その言葉は他人に伝えることが出来ないという事になる。だけどその飲み込んだ言葉は決して無駄になったわけじゃないから安心すると良い。自分の中で必ず糧となっているはずだから。


だから。


それらを闇雲に外に出す行為が何を招くかもう一度考えるべきだ。


俺は自分にそんな事を言い聞かせながら。


溢れてしまいそうな言葉を必死で飲み込む時がある。



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