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 ■[ Movies ] 2007/05/01 [ Tue ]



☆『スパイダーマン3』 - 2007年5月1日(火)全国ロードショー
 鑑賞日:2007/05/01
 観賞場所:T-JOY大泉(18:50の回)

スパイダーマン3

つまんなくはない。けど、突っ込みどころは満載。そして面白かったパートワンをさらに上回ったパートツーを超えることはやっぱり出来なかった、という印象。もうちょっと描き方を工夫すれば絶対にもっと面白くなったと思う。物語のテーマや大まかな流れは非常に『らしい』モノだけに勿体無い。

とにかく詰め込みすぎてしまったのがその主な原因のように思います。今まで張られていた伏線を本作で全部消化しようとして、唐突だったり違和感があったりする場面が多数。戦う場面は全シリーズ中で一番凝っているし、激しいモノになっていてとても楽しめるのだけれど、物語の伏線の回収が力技になり、流れ作業的な荒っぽさを感じます。

俺はスパイダーマンというキャラクターが昔から大好きで、それが大画面でかっこよく飛び回るだけで楽しめてしまうファンです。だけれど、さすがに三作目ともなるとキャラクターの魅力だけではちょっと飽きてくる。だから、物語をもっと丁寧に描いて欲しかった。

本作においてヴェノムがやっと出てくるというのを凄く楽しみしていたのだけれど、それも、いざふたを開けてみたら時間が足りない中で無理やり登場させた感じになっていてちょっとガックリ。相当美味しい敵キャラだけに、もっとクローズアップして欲しかったなぁ。なんて勿体無い。

本作のテーマは笑っちゃうくらいわかりやすく『復讐は何も生み出さないよ。憎しみはパワーの源には成りうるけど、それは周囲を傷つけていくよ』というもの。憎しみの力を象徴するものとして今回スパイダーマンに取り付く宇宙から来た謎の生命体の存在がありますが、それに取り付かれたスパイダーマンの暴走の描き方ももっとうまくやれたはず。そこもまた勿体無い。あまりにも突飛で、極端に描かれている為に、個人的には見ていてちょっと引いてしまう程でした。

これだけの話題作なのだから、無理をせずヴェノムの登場は4にまわすとか(今の時点では3で終わりってことになってるらしいから無理に詰め込んだという事情があるのだろうけど)、上映時間を思い切って3時間半くらいの超大作にしてしっかり描ききるとかして欲しかった。スパイダーマンという素晴らしい素材を活かし切れなかったシリーズ3作目。とにかく勿体無いの一言に尽きる。
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 ■[ 雑記 ] 2007/05/01 [ Tue ]



こんばんわ。アイバですけど。

先日ボーナスが出ました。うちの会社のボーナスは何故か4月と年末なんです。今年度から夏冬になるらしいけど。そのボーナスが驚きの金額。なんと7桁。前の会社はゼロだったのに。今の会社には入ってまだ二年目なのに。昇給も定期的にされてるし。この前資格を取ったからまた5000円だか3000円だかアップするし。前の会社が酷かったのでそのギャップに驚きを隠せません。年収が倍近くなった・・・・。来年の税金が怖いよ。

収入の面では色々安心できる要素が多くなってきて、仕事自体にも大きな不満は無いです。まあ、目の前の仕事が俺には難しくて困ったり焦ったりってのはしょっちゅうだけど、前の会社のようにそこにいるだけで感じてしまっていた嫌悪感はもうないです。多分自分の中で仕事に対して折り合いがついてるからだと思います。

それはそれで悩み事がひとつ減ったと言っていいんだろうけど、そうするとまた他の悩みというか考えが自分の中に生まれてくるもんなんですね。ちょっと漠然としているけれど、とにかく以前とは比べ物にならないくらい、人として成長するにはどうしたら良いのか、と考え込むことが増えました。

確かに転職は成功だったと思うし、愛する奥さんもいるし、愛犬も元気だし、凄く幸せなんだけど、そうやって人生が前進していくと自分の中で解決していくことが多い反面、わからないことも増えていく感じです。宮本武蔵じゃないけどさ。進めば進むほどわからんことばかり。進めば進むほど自分の小ささに気づいていく。

仕事であれなんであれ、新しい人々と出会った時、未知なる刺激を感じなかったとこはいまだにありません。必ず何かしらわからないことを渡される。相手が単純に尊敬できる人間だとか、軽蔑する人間だとかはこの場合あまり関係が無い。とにかく自分とは違う感性、生き様、行動から受ける刺激とか影響力だとかは若い頃に比べて減るどころか増えている感じがします。

それは何故かというと、以前よりも多少なりとも人生とか人間だとかのコトを学んできて、若い頃よりも見えるものが増えたからなのかもしれない。成長の証なのかもしれない。けど、今の俺はそれを単純に『自分は成長しているな』と素直に喜べないでいます。だって、進めば進むほど人間ってのはますます深くて複雑な生き物だと感じるから。本当に底が見えないから。

けど、その中で掴み掛けているコトがあるのは確か。それは人間同士の関係において自分が憧れる振舞い方に少しだけ近づけるであろう重要な要素になっているモノ。それは『人を信じ、くだらない憶測をやめる』ことです。けど、それを実現させる為に自分の器がまだ及ばない。それは何故なんだろう。何が邪魔をしているんだろうってそこに立ちはだかるモノが何かしばらく考えていました。

そして何となくそれがわかってきた気がします。それは、俺が自分自身をまだ信用しきれていないというコト。常に頭の何処かに『自分ごときが・・・』という考えがあるというコト。それが原因で誰かが俺に褒め言葉やうれしくなるような言葉をかけてくれたとき、『本当にそう思っているのだろうか』という疑問を持ってしまい素直に受け取れないことがあるのです。

それは一見単純に他人を信用できないでいるだけのように見えるかもしれない。単に相手が信用ならない人間かもしれないと慎重に生きているように見えるかもしれない。けど、実はそうではないんです。俺の場合相手はあまり関係ない。他の誰でもない、自分自身のことを信用しきれていない、『俺ごときが他人に好意的に受け入れられるはずが無い』と何処かで思っているからなんだと思います。

仕事が以前よりずっとずっとマシなモノになり、収入も爆発的に増え、自分を頼りにしてくれるパートナーを得たことで、確かにそれ以前に比べれば遥かに自分に自信を持てるようになってる。けど、それもまだまだ完全じゃない。やっぱりまだ何処かに『自分嫌い』や『自分不信』が残っている。今俺はそれを実感しています。

そこを乗り越えなければ多分一歩先には進めない。他人を信じられるかどうかは、自分を信じられるかどうかにかかっているんだろうな。俺は自分を信じられる人間になりたいです。そして、ならなくちゃいけないと思っています。だって、そうじゃなきゃ俺を頼りにしてくれる人に失礼だもの。
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 ■[ Books ] 2007/05/06 [ Sun ]



☆スラムダンク (1〜31) [ 井上 雄彦 ]
スラムダンク

ええ!? 今更!? と言われそうだけどもしょうがないじゃん。はじめて全部ちゃんと読んだのがつい先日なんだもの。これまで井上氏の漫画はバガボンドだけちゃんと読んだことがあり、その時点で天才だと思っていたのだけれど、これを読んでその思いがさらに強くなりました。

正直、読む前はたかが高校生の部活の話だろ?と思っていた。まあ、確かにそのとおりなんだけど、全ての登場人物が魅力的なので『たかが学生の部活』とわかっていながらも、物語の世界にグイグイ引き込まれていきました。これは本当に面白い!

主人公桜木花道の素晴らしすぎるキャラクター。そして脇を固めるチームメイトたちのキャラクター。全ての人物が見事なまでに描き分けられていて、それぞれ違った素晴らしい魅力を持っています。

花道はバスケットボールはまるっきり初心者で、憧れのはるこさんの気をひく為に入部したという中途半端な男のように見えるけど、彼はバスケを続けていくうち純粋にバスケが好きになっていきます。自分なりに頭を使い、常に『どうすればうまくいくか』を考え、『今の自分が出来ること』を最大限引き出そうとするその姿が何よりも爽やかでカッコイイ。

主人公が努力する様を描いたスポーツ漫画は数限りなく世の中にあるけれど、本作は『スポ魂』と言うほど暑苦しくない全く新しい描き方に成功した最初の漫画なのではないでしょうか。本作で活躍するキャラクターは花道を始め全てが爽やかで清々しい。しかもそれは決してわざとらしくない爽やかさ。本当に読んでいて気持ちがいい。

さらに試合の描き方もウマい。初心者花道が試合を重ねる度に成長し、チームがどんどんひとつにまとまっていく様子を見事に描き出しています。バスケットボールを題材にした漫画はコケるというのがそれまでの常識で、本作も連載を始めるときに作者の井上氏は編集者にかなり反対されたらしいですね。だけれど、その心配を良い形で裏切り、それまで成功するのが難しいとされていたバスケ漫画をこれだけ魅力的に描いたのは本作が最初でしょう。やっぱり井上氏は天才だよ。

女の子にモテたいからはじめたバスケをどんどん好きになっていく花道。そして彼は純粋にバスケットマンとして成長していき、さらにバスケットを通して人としても成長し、自分のことだけでなく仲間のことを思いやり頑張る姿まで見せるようになる様は本当にステキすぎる。

それに加えて一時自分を見失っていた三井の再生、誰よりも全国制覇を夢見て頑張ってきた赤木やメガネ君の直向な姿、天才として描かれている流川ですら精神的な成長をしていく描写がしっかりとなされています。出てくる連中がみんなイイヤツばっかりなのに読んでいてちっとも嫌味が無いのは何故なんだろう。これは本当にすげぇええ。

ただ、せっかく張ってあった多くの伏線が未消化のまま終わる部分が存在するのが残念。もともとはもっと先まで描くつもりだったのは明らか。だけれど、31巻まで6年の連載を続けてたった4ヶ月しか話が進まなかった為、意図的に一度終わりにしたみたいですね。それでもちゃんと最後は綺麗に終わっている辺りがまた井上氏のスゴイところ。

本作は打ち切りなんていう言葉とは全くの無縁で、最高潮に盛り上がって終わる。だから、こそ伏線が張りっぱなしになった部分やその後の花道やその仲間たちの姿を見たいというファンは多いでしょう。俺ももちろんそのひとりです。だけど、このまま終わってしまっても良い様な気もしてます。最後の花道の『天才ですから』という言葉を読んで最高に爽やかな気持ちになれたから。

もし、つい先日までの俺のようにまだ本作を読んだことがない人がいたのなら、それは人生の大きな損失のひとつだと思えるほど、超名作。
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 ■[ Books ] 2007/05/06 [ Sun ]



☆リアル (1〜6) [ 井上 雄彦 ]
リアル

先日、スラムダンクを全巻読んでこちらも読みたくなり、現時点で最新巻である6巻まで一気に読みました。やややや、これもまたすげぇ面白い! なんなの井上雄彦って人は!

本作はスラムダンク同様にバスケットボールを題材に持ってきているけれど、同じバスケでもこちらは車椅子のバスケットボールの話です。そして大きな違いはそこだけでなく、バスケというスポーツそのものを描いていたスラムダンクに対し、こちらはバスケをあくまでも触媒にして人間を描くことを目的としている点だと思います。

6巻まででメインとなるキャラクターは3人。骨肉腫で片足を失った戸川、交通事故で下半身麻痺になった高橋、そして自分は健常者ながらもバイク事故で後ろに乗せていた女性を下半身麻痺にしてしまった野宮。3人とも10代の若者です。彼らはそれぞれの『現実(リアル)』を、そして自分自身を探している。バスケという共通の触媒を通して、それぞれの『現実(リアル)』をどう受け止めていくのか、それが本作の最大のテーマとなっています。

本作は井上氏の作品でいつも重要な位置を占めるテーマが凝縮されたかのような物語だと思います。スラムダンクにおいては、主人公桜木花道が初心者であるにも関わらず、チームを勝利に導くために『今の自分が出来ること』を最大限の努力で引き出そうとするし、宮本武蔵を新しい切り口で描いているバガボンドにおいては、主人公武蔵が人として成長するために、『今の自分が出来ること』を命がけで模索していく。

そして本作の主人公3人は、まだハッキリとわからない自分の目指すモノや、自分の目の前に突きつけられた現実をどう受け止めるか迷い苦悩しながらも、『今の自分が出来ること』をそれぞれのやり方で模索していく姿を描いています。

本作の中で、『今の仕事は他にある目標を実現するために金さえ稼げればそれで良い、だからこんな仕事は自分にとってどうでも良い』と言い切る連中に対して野宮が口にする科白がとてもとても印象的。

彼は言います。

『俺は何を目指すのかすらまだみつかってねーや。でも、だからこそ、今を生きることにした。おめーが踏みにじっている今を。今いる職場がつまんねえ職場だろうと俺の道であることに変わりはねぇ。俺のゴールにどうつながるかは知らねえが、いつかつながることは確かだ。』と。

今のまだ自分が納得できない苦しい状況は、その先にあるかもしれない『納得できる自分』とは決して切り離されているわけじゃなく、地続きになっている。今を踏みにじるヤツはきっと未来だって踏みにじる。本作はそんな多くの人が分かっていそうでわかってなくて、気づきそうで気づかないそんなコトがメインテーマになっていんだと思います。

それは井上氏の代表作であるスラムダンクやバガボンドにおいても形を変えて登場してきたテーマです。それをもっともストレートに表現しているのが本作なのではないでしょうか。

俺は過去に自分が納得出来ない環境で2年間働いていました。自分が目指すのはここじゃないって感じるところで2年間ガマンして働きました。そこで働くことは本当に苦痛でした。何とかしなくてはいけないと常に考えていました。そこにダラダラといたら転職出来る機会を失い、労働条件の悪いまま、収入が苦しいまま年をとってしまうと思っていました。きっと収入も環境も大差ない会社を点々とする結果となるだろうと。

だからといってそこで過ごした2年は無駄だとはこれっぽっちも思ってません。自分にとって次に進むためにはその2年間は絶対に必要だった。そこで学ぶべきことは多かった。そこでの仕事は苦しかったし、そんなところでしか雇ってもらえなくなるまでダラダラとフリーターをしていた自分を後悔しない日は無かったけど、目の前にある仕事は一生懸命やりました。それはここでの経験は絶対に将来につながっていると思ったから。地続きだと思ったから。

そして資格を取り、今の職場の募集を見つけた。そのチャンスは絶対に逃しちゃいけないという自分の声が聞こえた。それは確信に近いモノだった。だから前の職場の経営者に今やめるなら転職先に嫌がらせをしてやると言われても諦めないで土下座までした。社員にやめることを話したら滅茶苦茶非難されたけどガマンした。

確かにそこでの仕事は辛かった。納得なんかしてなかった。そこで働いている人たちは仕事を一生懸命やっている人たちだったけど、盲目的に本当に『今』しか目に入っておらず、地続きになっているその未来を意識して話をしても通じる相手じゃなかった。

俺はどんな状況であれ、今を一生懸命に生きることは大事だと思うのは彼らと一緒だけど、ただ闇雲に一生懸命に生きてればそれで良いとは思わない。盲目的に必死で生きて、自分が捕まえなくてはいけないチャンスを逃すわけにはいかない。その点は最後まで理解されなかったと思ってます。きっと彼らに言わせれば、会社が一番忙しい時期に重なって辞めていった俺は最低最悪な無責任男なんだと思う。

今でもそこの職場は劣悪な環境だったと思っているし、会社として相当低レベルなところだと思っているのも変わりがないけど、俺はその先の自分を得る為にそこでの経験そのものは絶対に必要だったと思って大事にしているし、そこでの出来事は今の状況と地続きになっているからこそ一生懸命やっていたと思っています。

だから決していい加減な気持ちで働いていたわけじゃない。ただ、盲目的に目の前のことをこなすためにチャンスを逃したのでは一生懸命やっていた意味が無くなるから、ハッキリと感じ取ったチャンスの時を無駄にしないためにそこからの引き際を見極めて行動しただけ。前の職場の人にはきっとそこは理解されてないし、これからも理解されない。理解してもらおうとも思わない。そこにいたのはそういう人たちだった。

・・・・・話がそれまくったけど、本作『リアル』においての野宮の科白は過去の俺のそういう経歴をフラッシュバックさせたんです。そして心がものすごく共鳴しました。だから読んでいて本当に心が震えました。

『今を生きること』というのは小説や映画、漫画などで多く題材にされてきたテーマだと思うけれど、その言葉が持つ意味を深く理解し、伝えようとしている物語はそんなに多くない。けど、本作はそれをしっかりと伝えようとしているように感じるほど、素晴らしい漫画だと思います。これから先、どんな『リアル』が描かれていくのか目が離せません。

ただ一年に一冊しか新刊が出ないこのペースはなんとかして・・・・。
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  2007年5月



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